A:がんの悪性度が低く、しかも患者さんの平均余命が10年未満なら、治療をせずPSAの観察だけで経過を見る場合もあります。
ご質問の方は76歳ですので、現段階の平均余命は10年弱です。医師は積極的に治療をするより、経過観察したほうが生活の質がよいと判断したのではないでしょうか。
前立腺がんでのホルモン療法はインポテンツの原因となりますし、性欲減退の結果、女性に興味がなくなる人もおられます。のぼせや肝障害などの副作用もあります。
●生活の質を落とさない
70歳台でも前立腺生検をする意味は、がんの悪性度が高い場合、治療を検討する材料になるからです。低悪性度のがんで経過を観察している場合でも、PSAがどんどん上昇してきたときは、方針転換して治療が始められます。
ホルモン療法は2種類に分かれます。一つは、月1回もしくは3カ月に1回皮下注射し、睾丸からの男性ホルモン(テストステロン)分泌を抑え、前立腺がんの進行を止めるものです。
もう一つは、抗アンドロゲン剤というカテゴリーの薬で、毎日1錠服用します。ホルモン療法としては両方を併用するのが最も強力な治療ですが、副作用も出やすいのです。作用としては注射剤のほうが効果が大きいので、注射剤のみでの治療も可能です。
治療費は、自己負担3割の場合、負担額は注射剤は1カ月用で4万円強、3カ月用で7万円強です。経済的負担も大変です。
治療は、前立腺摘出術もあります。両側睾丸摘出術を併用すれば、注射剤は不要となります。しかし、睾丸摘出には抵抗がある人が多いため、前立腺の摘出だけにする場合が多いです。
さらには放射線療法もあるし、新しいホルモン療法も登場しています。
ご質問の方は夜の方も現役とのことですが、それを重視するなら、積極的な治療は避けたほうがよいでしょう。全身の健康状態や免疫を高めるような自然な療法を行うとよいと思います。
牧典彦氏(小山病院院長)
自律神経免疫療法(刺絡)や加圧トレーニング、温熱療法、オゾン療法など保険診療の枠に捕われずベストな治療を実践。小山病院(大阪市東住吉区)院長。