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熱き侍たちが躍動!! メジャーリーグ Times 「変則7人ローテ」採用で前田健太はどうなる?

 ドジャースの前田健太は、今季開幕から4試合連続で冴えない投球を続け、4月下旬には防御率が8点台まで上昇しローテ落ちの危機に瀕していた。しかし、土俵際で甦り、4月28日のフィリーズ戦以降は、3試合連続で好投し完全復活をアピールした。
 その上り調子のマエケンを、ドジャースはどこにも故障がないのに故障者リスト(DL)に入れた。表向き大腿二頭筋を痛めたことにしているが、本当の理由は先発投手の頭数が過剰になったため、マエケンを短期間休ませて他の投手に先発登板の機会を与えることにあった。

 メジャーリーグ随一の金満球団で先発投手8人を擁するドジャースは、開幕時は1番手・カーショウ、2番手・マエケン、3番手・ヒル、4番手・マッカーシー、5番手柳賢振(ユ・ヒョンジン)でローテーションを組みシーズンに入った。
 その後、3番手のヒルが指先のマメを潰して4月半ばにDL入りし、代わりにロングリリーフに回っていたアレックス・ウッドが入った。さらに、調整が遅れていた将来のエース候補フリオ・ウリアスが4月下旬、ローテに復帰。5月半ばには指のマメを潰して戦列を離れていたヒルが復帰したため、定員5人のローテに7投手がひしめくことになった。
 そこでドジャースのロバーツ監督はハニカット投手コーチと相談の上で、大エースのカーショウはこれまで通り中4日で起用するが、それ以外の6投手に関しては、順番に休みを取らせながら起用することにした。実際にはどこも悪くないマエケンが、好投した翌日にDL入りしたのは、休む順番が回ってきたためだ。

 メジャーの球団はどこもローテを5人で回すことにこだわるため、それなりの実績を持つ先発要員が7人いても、成績がよくない2人は容赦なくマイナー落ち、あるいはリリーフに回す措置を取る。ドジャースがそれをしなかったのは、以下の3つの事情がある。
 (1)先発要員8人中6人が高額年俸の長期契約選手で、契約に「本人の同意なしにマイナー落ちさせることはできない」という項目があるため、成績が悪くてもマイナーに落とせない。
 (2)2年目のウリアスは将来のエース候補で、球団が今季はリリーフでは使わないという方針を固めていた。
 (3)8人の先発要員の中で最も実力が下だと思われていたA・ウッドがローテ入りした後、目を見張る好投を続けたため、リリーフに戻せなくなった。

 このような事情があったため、ドジャースは「変則7人ローテ」を採ることになったのである。
 この変則的な投手起用は、ローテに故障者が2人出れば自然消滅する。しかし、休ませながら使うと、先発投手はなかなか故障しなくなるので、しばらく続く可能性が高い。
 この「変則ローテ」だが、マエケンにとって、どんなメリットとデメリットがあるのだろうか?

■メリット
 (1)シーズン中、数回短い休みが入るので、昨年のようにスタミナ切れを起こしてシーズン終盤に失速するようなことはなくなる。
 (2)疲労が蓄積された状態での登板が大幅に減るため、ゲーム中盤に球威が落ちて失点するケースが減り、QS(クオリティー・スタート)が多くなる。

■デメリット
 (1)先発登板数が26〜28試合に減少。投球イニング数も規定投球回数(162イニング)に届かない可能性がある。
 (2)収入が大幅に減る。その理由は、契約で基本年俸が低く抑えられ(300万ドル=3.3億円)、登板試合数とイニング数が多くなればなるほど、多額のボーナスが支払われる方式になっているからだ。具体的には、登板試合数は、15試合、20試合をクリアすると各100万ドル、25試合、30試合、32試合をクリアすると各150万ドル支払われることになっている。
 イニング数の方は90イニングをクリアすると25万ドル。それ以降は180イニングまで10イニングごとに25万ドル加算され、さらに190イニング、200イニングをクリアすると75万ドルずつ加算される。マエケンは昨年32試合に登板し173イニング投げたので、ボーナスの総額は、開幕時に登録メンバーに入っていると支給される15万ドルを加えて890万ドルになった。これに基本年俸300万ドルが加わり、昨年、ドジャースから受け取った金額は1190万ドル(13億円)に達した。
 しかし、「変則7人ローテ」が続いた場合、今季は登板試合数、イニング数が大幅に減り、ボーナス総額は400〜500万ドルになる可能性が高い。これは年収が400万ドル以上減ることを意味する。
「変則7人ローテ」のおかげで防御率がよくなったとしても、それほど年収が減ってしまっては元も子もないように思えるが、日本人大リーガーは金銭に執着しない人物が多い。マエケンもその1人なので、不満を唱えるようなことはないだろう。

スポーツジャーナリスト・友成那智(ともなり・なち)
今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2017」(廣済堂出版)が発売中。

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