歴史作家・司馬遼太郎が愛し、小説のタイトルにもなった菜の花は、毎年この時期に花を咲かせ「菜の花ロード」を彩っている。それだけに「腹が立つより寂しい思い」(記念館のボランティア職員)といった声が、関係者から聞こえてくる。
「今までにこんな事件、起こったことがありません。つぼみばかりが切断されていただけに、食用にするために摘んだのではという見方もある。しかし、これらの菜の花は、地元が特に厳選して育てた観賞用のものばかりなんです。それも、司馬さんの命日の『菜の花忌』に向けての時期だっただけに、意図的なものを感じざるを得ません」(関係者)
ある出版関係者も、こう語る。
「司馬さんの『坂の上の雲』や『翔ぶが如く』などの作品に対し、戦前の日本の帝国主義を肯定的に描いているとして批判をする人もいる。それが今回のことに関係しているとすれば、まったく姑息としか言いようがない」
現場近くの防犯カメラが、1日未明に菜の花の前でかがみ込む男の姿を捉えているというが、記念館では被害届けは出さずに今後の成り行きを見守る構えで、「菜の花ロード」には行為を諭すボードが掲げられた。
また、菜の花畑で有名な鹿児島県指宿市からは、激励として菜の花1500本が届けられている。
「一方で、怒りが収まらないといった感じなのが、地元の警察。現場となった『菜の花ロード』は大阪府警布施署の目と鼻の先なんです。そんなところで名所が傷つけられたわけですから、まあカンカンですよ」(地元記者)
司馬氏は野に咲く菜の花が好きだったといい、小説「菜の花の沖」も残している。それにしても、犯人の目的はいったい何だったのか? それこそ花を足で踏みにじる心無い行為は許せない。