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本好きリビドー(47)

◎快楽の1冊
『デブを捨てに』 平山夢明 文藝春秋 926円(本体価格)

 英ロック・バンド、キング・クリムゾンが1969年にリリースした『クリムゾン・キングの宮殿』は、日本でもかなり有名な部類に入るアルバムだ。人間の心の奥底にある狂気を戯画化したようなジャケットはユーモラスで、かつ恐ろしくもある圧倒的なインパクトを持つ。肝心の内容もしかりで、ジャズのフリーキーさとクラシックの風格を“ごった煮”にした混沌が平凡な常識を破壊し尽くす。
 先月2月に出た本書は4篇収録の短篇集だ。そもそもタイトルからして随分と挑発的だが、何しろ表紙のインパクトがかなりのものである。気持ち悪くもありユーモラスでもあり、まさしく『クリムゾン・キングの宮殿』のジャケットを彷彿させ、全ての収録作があまりに悲惨な世界を描いている。どんなにあがいても脱出できない窮地の真っただ中にいる者が必死に抵抗を試みるが、事態は悪くなる一方なのだ。ただし、追いつめられる当人にとっては悲劇だが、追いつめる側からすればどうということはない。むしろサディスティックな快感に浸っている。この徹底した立場の違いを作者はドライに客観化し、限度のないブラック・ユーモアにまで昇華させている。
 「マミーボコボコ」は日雇い労働で何とか食いつないでいる男が昔別れた娘から手紙をもらい、最初は嬉々として会いに行く話だ。ところが娘の家は尋常ではない大家族で、その生活ぶりの番組化を試みているテレビ局に男は一方的に利用されていく。表題作では借金返済を伸ばしてもらう条件として主人公がやはり尋常ではない肥満の女を“捨てる”よう命じられる。捨てる場所に行くまでの道中は絶望と笑いのカオス状態だ。
 全篇通して根底にあるのは人の差別意識だ。差別が笑いを生み出すのは確かな事実であり、そこから目をそらしていないところに真のヒューマニズムを感じる。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 テレビや雑誌等のメディアで話題の性格診断を1冊にまとめた『ディグラム性格診断〜本当の自分と相性をズバリ解明!』(ポプラ社/1000円+税)。2013年の発売ながら、いまだにアマゾン等のネット通販で売れ続けている。
 ディグラム性格診断とは、マーケティング・コンサルタント会社のディグラム・ラボ(株)が考案した独自の診断テストのこと。心療内科などの医療現場で実施されている心理考察と、約23万人の膨大なアンケート調査に基づく統計を合体させた、最先端のテストである。データをよりどころにした科学的診断は「驚くほど当たる」と評判だ。
 掲載されている20項目の質問に「はい」「いいえ」で答えていく。すると、「仕事も恋もノリが命の」「恋愛は後先考えない肉食系」「論理的でこだわりの強い人間」など、自己の性格が「確かにその通り…」と、判明するわけだ。
 さらに診断結果を応用し、自分に最適な異性はどういうタイプか、また平均年収が高いか低いかといった仕事・経済面まで、きめ細かく分析している。中には悩み事まで的確にあぶり出してしまう結果も登場するらしく、単なる“占い”とは違う性格診断書として、絶大な人気を博しているのだ。
 ディグラム・ラボ(株)の著書は他にも『47都道府県ランキング発表! ケンミンまるごと大調査』(文藝春秋)、『焼き肉屋で最初にタンを注文する女は合コンでモテる』(朝日新聞出版)等、どれも好調だ。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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