「ガンにもつながりかねない排尿障害、前立腺肥大症の早期発見というのは大事ですが、難しい。ですから最低でも1年に1度、いや半年に1度の血液検査をしてPSAの値をチェックするのが発見の近道ですね。血液検査は他の病気も見つかる可能性もあるし、ぜひとも受けてほしい」
近年、日本人に急増中の前立腺ガンを、「進行が遅い」などと甘く見ている人も少なくない。しかし、ガンはガンである。命を奪いもすれば、たとえ助かっても、深刻な後遺症を残すことがある。
前立腺肥大の検査から、早期ガンが発見される確率は比較的高いが、症状を頼りに発見しようとするのは不可能に近いとされる。
ある大学病院の専門医は、
「血尿が出た時には進行ガンの可能性が高い。また膀胱に痛みがある状態は、転移している可能性が。前立腺ガンの怖いところです」
と言い、早期に見つけるには、人間ドックでもよし、内科医でもいいので、まず定期的な血液検査から始めることが肝要だという。
また、中高年にもなると生活習慣病の一つや二つ抱えている。その人たちが前立腺など排尿障害で悩むことも多い。その代表格が糖尿病だ。再び前出の村上主任の話。
「糖尿病の人は体内の余ったブドウ糖を尿と一緒に体外へ出そうとして、頻尿・多尿になります。ですから、夜間頻尿が前立腺肥大でも過活動膀胱でもなく、糖尿病が原因という場合があります。前立腺用の薬を止めて、糖尿病の治療を3カ月続けたら数値が改善して、夜間頻尿も昼間のトイレの回数も減る。そのケースに当てはまった患者さんは、驚いた顔をしていましたね」
他に心不全の患者も、夜間頻尿が見られるという。心臓が元気なうちは立ったままの姿勢で腎臓に血液が流れ込むが、心不全になると少なくなって、尿が作られにくくなる。だが、夜床に就いて横になると、心臓から腎臓に大量の血液が送られるため、尿が多く作られる。結局、頻尿を繰り返す前立腺肥大症と同じ現象が起こる。大学病院の心臓内科で心不全の治療後に頻尿現象は改善したという患者も少なからずいるという。
近年は、1本の注射器から取る血液の検査で、大半の病状が判別できる時代。頻尿や尿の切れ、尿失禁などを自覚したら、恥ずかしがらずに、まずは泌尿器科の診察を受けてみよう。