この作品は、日経ネット丸の内オフィスにて、連載されていた有川浩の小説のドラマ化。有川さんの『阪急電車』も中谷美紀の主演で映画化が決まっていて、今後注目の作家さんね。
特に目標も無く適当に人生を生きてきた25歳のフリーター武誠治(二宮和也)は、かねてからブラッグ企業気味だった職場に嫌気がさして、入社して3か月で会社を辞めてしまう。そんな息子の姿に頑固者の父・誠一(竹中直人)はふがいなさを感じ、「もっと現実を見ろ!」と容赦のない罵声を浴びさせていた。そんな息子と夫をやさしい笑顔で見守る母・寿美子(浅野温子)も、極度のストレスから心が壊れてしまい…。
「自分の職が決まらない事を、何もかも社会のせいにするな!」と怒鳴る父、研修で変なマインドコントロールを強いる会社、家族に気を使いすぎて躁鬱病を患う母。誠治をとりまく環境が現代的な絶望に満ちていてトホホ。同じフジの月9「流れ星」でも、ロスト・ジャネレーション世代よりも悲惨なその下の世代の女の子を描いているけど、このドラマは、その男の子版。平成ニッポンの20代って、まったくもって浮かばれないわね。チャッピー、社内飲食で飲む酒を割り勘徴収する上司なんて信じられない。昔は上司が買いだしのお金を立替えてくれて、あとでこっそり接待費で落としていたものよ。
母のために建設現場で働きだした誠治はここでも仕事をナメていて、ガテン系女子の千葉真奈美(香里奈)に「誰に言い訳しているの?」と弱い自分を見透かされる。やっと、何かに気づき、希望の芽が見え始めるが…。
「若者に職が無い」、「若者の○○離れ」、「若者の暗い未来」は、社会の責任なのか? はたまた自己責任なのか? シーソーのようにゆれる「社会」と「自己」の間で悩み、成長する誠治の姿を二宮和也が静かに熱演。あと、誠治の子どもの頃の回想シーンで母の浅野温子が昔とあんまり変わってなくてびっくりしたわ。(チャッピー)