認知度の低いマイナースポーツは4年に1度の五輪こそ、その存在をアピールする絶好の舞台になる。
オグシオはコケたものの、代わって末綱聡子と前田美順ペアの「スエマエ」がベスト4入りして、大喜びだったのが日本バドミントン協会。
メダルの夢はロンドン五輪に持ち越したが、スエマエが中国の世界ナンバー1候補に勝ったことを評価した。
「代表の男女10人、全員頑張ってくれた。代表全体に報奨金を出したい」と事務局長。太っ腹の大盤振る舞い…とはいかず、その総額が銅メダルの報奨金300万円から1円を差し引いた299万9999円。
これを10選手で山分けでは、今後の士気にかかわるのではないか。
対照的に大風呂敷を広げて見せたのは、日本フェンシング協会。男子フルーレで太田雄貴が初の銀メダル取りの快挙。JOCの強化指定ランクが水泳や柔道と同じ「特A」になれば、年間強化費は1億円前後になると期待している。マイナースポーツに詳しいジャーナリストは、次のように言う。
「まだ決定したわけではないのに、協会は大はしゃぎ。ある関係者は強化費の1億円を太田にぜんぶ、と言ってるんです。『特A』になれなくても1億円集めて、報奨金代わりとして出すと張り切っていましたが、その後は音沙汰なし。どうなるんでしょうね」
話だけで終わらないことを祈るしかないが、太田選手は現在、就職活動中だ。
ユニークなのは、野球のカナダ戦で好投した成瀬投手(ロッテ)へのご褒美。千葉ローカルでCM出演している建設会社が、3000万円のマイホームをプレゼントするというのだ。成瀬はこの家を団地暮らしの両親に渡す。孝行息子の鑑と表彰していいのでは?
超リッチな報奨金を手にしそうなのは、もちろん水泳の北島康介。平泳ぎ100mを世界新で2連覇したときは、日本中がお祭り騒ぎになった。スポーツ紙と一般紙が競うように号外を発行。
翌日の紙面では6、7面に渡って特集を組むスポーツ紙もあったほど。2日間に及ぶ北島フィーバーだったわけだが、その宣伝効果は半端ではなかった。大手広告代理店の関係者が証言する。
「宣伝費に換算すれば、100億円前後ではないか。テレビCMより数倍、宣伝効果があった。スポンサー企業は笑いが止まらなかったでしょう」
ちなみに北島は、05年に日本コカ・コーラと4年総額4億円の所属契約を結んでいる。ほかにミズノとも個人契約を結んでいて、それぞれから2冠の報奨金が出るとみていい。
「コカ・コーラで1冠1億円と言われていますが多分、それ以上でしょう。マネジメントをサッカーの中田英寿が所属するサニーサイドアップに任せているからです。プロ野球では当たり前になっている、成績に応じて報酬がプラスされるインセンティブ契約を結んでいるはずだからです。北島が引退説を否定したのも、ここまでビッグビジネスになれば周囲が簡単には納得しないからでしょう」
と言うのは、Jリーグ関係者。CM出演料は1本1000万円から、1億円の「超Aクラス」になったと言われる。リッチになっても、北島は辞められそうにない?
海外のアスリートに目を転じれば、北島以上なのがアメリカの8冠フェルプス。現在でも9社とスポンサー契約。その年収は5億円だが、8冠達成でスピード社からだけでもボーナスが100万ドル(約1億1000万円)。他の8社からもボーナスが出ると見てよく、その総額は1000万ドル前後になるといわれる。
まだまだ泳が続けなくっちゃね、北島クン。
○報奨金アラカルト
JOCの報奨金は、金300万円、銀200万円、銅100万円。それぞれ1個について出され、金2個、銅1個(400mメドレー)の北島は、700万円を手にすることになる。野球の成瀬投手はマイホームをゲットしたが、外国にはもっとユニークな報奨制度がある。
・タイは金メダルで1000万バーツ(約3200万円)。ただし、20年の分割払い。
・インドは列車の1等席が生涯、無料に。
・ベラルーシはソーセージ一生分。
・ドイツは毎月50lのビール。
幻の1億円になったのが、陸上400m障害の為末大。社外取締役に就任しているウェッジホールディングスが、優勝すれば1億円を用意していたが、予選であえなく敗退した。