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夏休みにごった返す 東京スカイツリー狂想曲裏ルポルタージュ(1)

 開業から完全予約制を続けていた東京スカイツリー(東京・墨田区)の高さ350メートルの展望台当日券が、いよいよ発売(7月11日)となった。夏休みに入れば、スカイツリーから少し足を延ばして浅草、上野、銀座と、様々な旅行プランが浮かぶ。
 人波が押し寄せるのは、これら観光地にとって大歓迎なのだが、その反面、観光名所が“観光難所化”するなど予想外の事態も起きている。

 まずアテが外れたケースを一つ。スカイツリーを運営している会社は『東武タワースカイツリー株式会社』という東武鉄道のグループ会社だ。同社は株式市場に上場していないが、親会社である東武鉄道は上場しており、スカイツリー開業の恩恵をもっとも受けると予想された。しかし同社の株価は、スカイツリーのように“天にも昇る”というわけにはいかなかった。
 開業日だった5月22日、フタを開けてみれば、当日こそ前日より少しだけ高く終えたものの、それ以降は安値更新という有様だ。
 「ツリーの最寄り駅である東武伊勢崎線・とうきょうスカイツリー駅(旧業平橋駅)の隣には、京成押上線、東京メトロ半蔵門線、都営地下鉄浅草線の3路線が乗り入れる押上駅があり、社員でさえ『運賃収入アップはまったく期待できないのでは』と心配していました。案の定、伊勢崎線沿線からの観光客はそれほどでもなく、危惧した通りになりました」(経済記者)

 これに輪をかけて不振なのが、オフィス街でもない墨田区押上地区に建てたオフィス棟の『東京スカイツリーイーストタワー』で、目下ガラガラ状態だ。地元商店主も「てっきりホテルだと思ったが、まさかオフィスビルとは」と、あきれ返っている。
 その地元商店街も、ツリーの押すな押すなの喧騒をよそに閑古鳥が鳴いている。
 「300店を超えるツリーの商業施設『ソラマチ』だけで、買い物や食事・喫茶まですべて事足りてしまい、地元商店街に立ち寄る必要などまるっきりない。先日、商工会の人も『スカイツリー客は地元に“カネ”を落とさず“ゴミ”ばかり落とす』と愚痴を言っていました」(前出・商店主)

 ギブアップ状態のものはまだある。観光バスの駐車場問題だ。スカイツリーの施設内外には55台分のバス駐車スペースがあるが、完全予約制で原則駐車時間は2時間以内。これでは食事しようと並んでいる間に集合時間が来てしまう。

 一方、スカイツリーから浅草、上野、銀座へ流れる観光客も激増しているが、これらはもともと駐車場不足に悩んできた観光地。周辺では、駐車場に入れずに降ろした客の戻りを路上で待つバスの車列が日常的な光景だ。都心部での新たなバス駐車場整備は簡単なことではない。
 「夏は大型バスが冷房を効かせたまま駐車しているので、熱気と騒音で苦情が出ていますが、いかんともしがたい」(日本バス協会)

 スカイツリーの親会社は鉄道会社だ。問題だとわかっていても、わざわざ電車利用の観光客を減らす対策は取らないだろう。

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