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夜を棄てたキャバ嬢〜スマホゲームにのめり込みすぎた麻衣〜

 いまや現代人にとって、一人一台のスマートフォンを持つことは珍しくない。電車に乗れば誰もが画面に視線を注ぎ、メールの返信やニュースサイトをチェックするなど、目的は人それぞれである。そんな光景の中、アクションやパズルなどのスマホゲームに熱中する者も多い。麻衣(仮名・21歳)もまた、キャバクラで務めている時にその世界へとのめり込んでいった者の一人だった。

 「最初は指名してくれたお客さんとの付き合いで、ゲームに登録したんです。ゲームは子供の頃、お兄ちゃんがやってるのを見ていたぐらいで、あまり詳しくはありませんでした」

 そんな麻衣が始めたのが国内で3000万ダウンロードされたという人気スマホゲーム『パズル&ドラゴンズ』だったという。元々、彼女を指名した客が熱狂的なパズドラマニアで、接客中にお互いのスマホを見せ合いながら、互いのゲームプレイを見せ合ったりしていた。そして麻衣は次第にそのゲームの魅力にどっぷりとハマっていったという。

 「レアモンスターが出るガチャガチャイベントが定期的にあるんですけど、お目当てのキャラが出るまで、毎回けっこうな額を課金していましたね」

 彼女の給料の一部はパズドラへの課金に消えていった。“あともう1回だけ”と目当てのものが出るまで、お金を注ぎ込んでしまったのだという。しかし彼女を悩ませたのは、お金の問題だけではなかった

 「最近のスマホゲームには特定の時間にしか出現しない期間限定ダンジョンというのがあるんですよ。パズドラも毎回、夜の1時間しか出現しない特別なダンジョンがあったりすると、その時間は仕事そっちのけでトイレに立て篭ってしまっていたんです」

 麻衣は勤務中であっても、長時間トイレに篭ってゲームをやり続けた。しかしそんな行動を店の人間が放っておくはずがない。

 「いつしか店長から怪しまれるようになり、“いつもトイレで何やってるの?”と聞かれました。さすがにパズドラやってますとは言えませんでしたね」

 彼女にとってキャラクターの育成のために期間限定ダンジョンをプレイすることは必須だった。そのため特定の時間にゲームをプレイできないのが過度のストレスとなっていった。

 「そんなことで辞めたのかって思われるかもしれないですけど、今はキャバを辞めて、ある程度自由のきく昼の仕事に変えました。夜はパズドラの公式生放送とかも見たいですし…」

 麻衣はゲームのために夜の世界を棄てた。最近は、自身のプレイ動画を録画し、インターネット上にアップするほどの腕前になったという。

(文・佐々木栄蔵)

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