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“山崎50年”が1本3250万円! 日本ウイスキーの秘密

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提供:週刊実話

 サントリーが売り出したウイスキー「山崎50年」が今年1月、香港のオークションで3250万円という異例の超高値で落札されて国際的な話題になった。このことでも象徴されるように、日本のウイスキーは世界中から絶賛され、アメリカ、カナダ、スコットランド、アイルランドに加わり、“世界の5大ウイスキー”の一つとして数えられるほど注目されている。

 この日本ウイスキーの大席巻の背景を業界関係者はこう明かす。
「2001年にニッカウヰスキーのシングルモルト『余市10年』が、英国のウイスキー専門誌『ウイスキーマガジン』が開催した、業界で最も権威のあるコンテストで世界最高得点を叩き出しました。その2年後、今度はサントリーの『山崎12年』が国際コンクールで金賞。さらには、サントリーから発売された『響』やニッカの『竹鶴』も高評価を受け、日本のウイスキーは世界トップレベルと評価されるに至りました」

 知名度の低かった日本のウイスキーが、世界から評価されるに至った理由は何か。
「1971年のウイスキー輸入の自由化で、日本ウイスキー市場が活性化しました。しかし、1980年に入ると増税や値上げ、酎ハイブームのあおりを受けてウイスキー離れが加速。さらに1991年にはバブルが崩壊し、一気にウイスキー需要低迷期に入りました。実は、この長期低迷期が今の日本のウイスキーの品質を上げることに役立ったのです」
 需要が減少していた期間、樽詰めされた大量のウイスキー原酒は熟成庫に眠ったまま。それが、逆に芳醇で上質なウイスキーが育まれることになったという。

 さらに日本ウイスキーが高評価される秘密をウイスキーメーカー関係者はこう話す。
「20年近い熟成期に加え、日本独自の要因と条件が重なり、それらが世界の人気ウイスキーとは異なる、個性的で美味しい日本ウイスキーを作り上げたのです。その独自要因の一つとして大きいのが、日本の良質な水です。日本初の蒸留所が京都と大阪の中間にある山崎に作られたのも、同地が古くから名水の里として知られていたからなのです」

 ウイスキー蒸留所関係者が、日本ウイスキーが評価されるさらなる秘密を語る。
「ウイスキーの造り方に日本は厳しい規制が課されていなかったことも、世界とは違う個性的で美味しいウイスキーとなった要因です。例えばスコットランドでは、オーク樽で3年間熟成させたものでなければスコッチウイスキーと呼ぶことはできません。一方、日本では、ウイスキー造りの伝統を尊重しつつも、自生のミズナラの樽を使うなど、様々な条件を試すことが可能だったのです。ミズナラで熟成させると、ココナツ、キャラ、シナモンなど、アジアで使われる香辛料の風味がもたらされる独特の味に仕上がります。またニッカウヰスキーでは世界で唯一、石炭の直火でたく蒸留器を使い、日本独自の味わいを作り上げることに成功しました」

 そこに、前述のように世界の最も権威あるコンテストで高評価を受け、一気に“日本ウイスキーブーム”が世界中で起きることになったのだ。事実、2017年の日本ウイスキーの輸出額は120億円を超え2007年の10倍以上。その人気は明白だろう。

 また、最近では日本で造られている地ビールならぬ地ウイスキーも世界で評価を高めている。例えば、2004年に創業したベンチャーウイスキーの「イチローズ・モルト」や総合酒類メーカーの本坊酒造のシングルモルト「駒ヶ岳」は「世界の愛好家から人気が高い」と醸造所関係者は語る。

 先に世界から注目を集めてブームになった日本のウイスキーは、近年は国内でも需要が急増中だ。
「ハイボールブームの影響を受けて、2008年頃から徐々にウイスキー需要が増加。そして、ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝とその妻リタの一代記『マッサン』が2014年にNHKの朝ドラで放送され一気に火がついたのです」(ウイスキーメーカー関係者)

 今や日本ウイスキーは国内外で大ブームなのである。しかし、いいことばかりではない。ブームの反動で生じたのが日本ウイスキーの原酒不足だ。ニッカウヰスキーは、年代物の「余市」すべてを2015年に終売し、サントリーは2014年に「山崎10年」と「白州10年」を終売、今年5月には「響17年」と「白州12年」を休売することを発表した。今後も国産年代物ウイスキーはますます希少になり、販売制限されるウイスキーが増えることが予想されている。

 ただ、現在、世界中で高評価を受けている日本ウイスキーのブームは、まだまだ治まる気配はなさそうだ。

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