本来であれば、指名挑戦者でもある興毅が、今秋にもWBA同級王者のデンカオセーン・カオウィチットとのタイトルマッチを行うのが本線と見られていた。ところが、交渉面で折り合いがつかず、代わりに同級11位の次男・大毅が10月6日(大阪市中央体育館)に挑戦することが決定。もし大毅がベルトを奪取した場合、同門対決は事実上不可能とされているだけに、悩める興毅の動向に注目が集まっていた。
だが、ここにきて一部報道で内藤との年内タイトル戦が急浮上。興毅と内藤といえば、昨年末に一度対戦が取りざたされたが、こちらも交渉がとん挫した。この試合が実現すれば、世間の注目が集まることは間違いない。興毅も内藤との対戦について「気持ちとしては勝てる自信はある」と意欲を見せている。
もちろん興毅が9月5日のディファ有明で行われるウンベルト・プールとのノンタイトル戦に勝つことは大前提となる。WBCへの鞍替えも選択肢に入ってきた興毅だが、WBA同級の指名挑戦者なりのリスクも伴う。
日本ボクシングコミッションの安河内剛事務局長は、興毅が内藤に挑戦した場合について「試合が決まれば、WBAのオフィシャルチャレンジャーの資格は外れますし、ランキングからも外れます。それが他団体にいった時のルールですから。さらに負けた場合は当然ランキングは下がるでしょう」と解説する。つまり、内藤戦が実現した場合、自動的にWBAの次期挑戦権は失効されるのだ。
さらにバツが悪いことに9月5日には、WBA同級2位ルイス・コンセプシオンVS4位オマール・サラドによる暫定王座戦を行うことが決定している。「これは大毅の試合が決まる前から決まっていたこと。WBAは次期挑戦者決定戦という位置づけなのでしょう」(安河内事務局長)と語っているだけに、興毅の王座挑戦はドンドン遠のいていってしまう。
一方、内藤に挑戦した場合も無傷では済まない。あるボクシング関係者によれば「規定路線として内藤が最有力となっているが、興毅は無敗というところに商品価値がある。内藤も、負けたらもう一度というのは厳しい。どちらにも絶対に負けられない戦いになるでしょう」と語る。
いずれにせよ規定路線では内藤が最有力となっているだけに、興毅は多大なリスクを背負って戦いに臨むことになる。