「今やユニクロ事業の8割を稼いできた国内市場が伸び悩み、2年連続で前年割れに陥っています。これに危機感を募らせたオーナーの柳井正会長(兼社長)が、香港上場をステップにユニクロ・ブランドを浸透させ、世界最大市場の中国で一気に大勝負に打って出ようと決断を下したのです」(証券アナリスト)
柳井会長は早い段階から中国シフトを鮮明にしてきた。現在、ユニクロの店舗は国内856店、海外512店の計1368店ある。そのうち中国・香港は270店と海外店の5割強を占める。少子高齢化に伴い国内市場のジリ貧化が避けられなくなった今、得意分野に一層資源を集中すべく、中国と本気で“心中”を決めたと言えば話は早い。
「柳井会長は『2020年に連結売上高5兆円』の野心的目標を掲げているが、昨年8月期の売上高は1兆1430億円と、まだ目標には程遠い。そこで中国の店舗を『'20年までに1000店舗に増やす』とぶち上げた。昨年秋、上海に鳴り物入りで世界最大級の旗艦店をオープンしたのも、中国傾斜の表れです」(同)
とはいえ、尖閣問題を機に日中間には暗雲が漂っている。もし万一の事態があれば返り血を浴びかねない。市場関係者は冷ややかだ。
「2年前の反日デモの際、ユニクロは『尖閣は中国の領土』と貼り紙して被害を免れた。いざとなれば貼り紙に加えて、香港上場を免罪符に使おうとの魂胆でしょうが、上場に伴い逆にユニクロ=日本企業のイメージが定着してしまいます」
これで同社が真っ先に標的になったとしたら皮肉である。