真っ黒な馬体に大きく派手な流星。それを上下に激しく揺らして突進する様は、まさに直線競馬の申し子といっていい。爆発的な加速が武器の純粋スプリンターだった。
その持ち味を最初に発揮したのが2002年の第2回だ。1番人気に支持されたのは、前年の安田記念で2着好走歴のあるブレイクタイム。続いたのがカルストンだった。前年のアイビスSDでメジロダーリングの3着に入った実績が評価された。
レースはダッシュを利かせたカルストンがいきなり支配した。素早くハナに立つと、13頭立て12番という好枠から鞍上・大西の好判断に導かれ、まったく荒れていない外ラチ沿いへ。ふだんから右にモタれる癖のあったカルストンにとって、右にラチを見る形は絶好だった。コーナーリングは苦手種目のひとつだったが、直線競馬ならその心配もいらない。
問答無用。グイグイ加速した。最後の400メートルから200メートルは何と9秒6というとてつもないラップも叩き出し、追いすがるブレイクタイムに2馬身差をつける完勝。勝ち時計の53秒7は今も破られていないレコードだ。
かくして重賞初Vを達成したカルストンだが、その後の競走生活もアイビスSDを軸に進んだ。翌年は脚部不安で自重したが、04年には2度目の制覇。その勢いでスプリンターズSに挑んだ。
不良馬場に助けられたとはいえ、当時の短距離最強だったデュランダルに4馬身差をつける圧倒的な逃げ切り。初のGIを手にした。
実は当初、管理する大根田調教師は出走に消極的だった。前年の15頭立て13着という惨敗が引っかかり、同じ直線競馬の香港挑戦により魅力を感じていた。しかしアイビスで見せたあまりの強さに方針変更。それが金星につながったのだ。
05年も4着と計4度のアイビスSD出走を果たしたカルストンはすでに引退、種牡馬になっている。そして今年、初年度産駒がデビューする。