A:ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の除菌治療については、私は消化器内科の医師ではないので、あくまで、歯科医師の立場から考えてみましょう。
結論から言いますと、ピロリ菌は口の中にも居ますから、除菌治療を行って胃や十二指腸のピロリ菌が除菌できても、口の中のピロリ菌はそのまま居続けるわけです。
歯肉の細胞を調べると、ピロリ菌のDNAが検出されますが、このことからも、ピロリ菌が口腔内に定着し、棲息することがあるとわかります。ちなみに定着とは、ピロリ菌が一時的に存在するというのではなく、常在、つまり常に存在しているということです。
なぜ、ピロリ菌は口の中にいるのでしょう。その理由としては、胃の中のピロリ菌がゲップや嘔吐などによって口の中に逆流してくると考えられています。また、ピロリ菌は、水を通して感染すると考えられていますが、この場合は口から侵入し胃に入っていきます。
●歯科の治療を行ってから除菌治療を
このほか、ピロリ菌は食べ物を介して感染するルートもあるとわかっています。その典型が親から子への感染で、母親が口移しで赤ちゃんや幼児に食べさせることによってうつるといわれています。
原因はともかくとして、除菌しても再感染することが実際にあるようですが、どうすればよいでしょうか。
胃のピロリ菌は胃潰瘍の原因となるだけではなく、胃がんの発症に深くかかわると考えられています。
このことから、消化器の専門医はピロリ菌の除菌治療を行うように勧めています。それも、若い時に受けると、その分、がん発症の確率は下がるといいます。
歯科医の立場から言えば、ご質問の方は、歯周病がある場合はその治療をして、さらに一定期間、口腔ケアを受けてから除菌治療を受けると良いでしょう。
渡辺秀司氏(とつかグリーン歯科医院院長、漢方歯科医学研究所所長)
神奈川歯科大学卒。同大学研修医を経て、横浜市でとつかグリーン歯科医院を開設。歯学博士。歯科領域に漢方を取り入れ、天然素材を配合したうがい薬や歯磨き剤を開発。独自な歯周病治療で名高い。