「政府は'15年10月に消費税率を10%に引き上げる(来年4月に8%)方針を崩しません。このタイミングに合わせて自治体に納める自動車取得税が廃止されるのは、消費税との二重課税との批判をかわすためですが、これでは財政が厳しい自治体は悲鳴を上げる。そこで穴埋めの増税策を考える必要が出てきた。野田氏をFCV促進に向けた研究会の顧問に据えたのは、新たな増税策をのませるための布石と理解すれば話が早いのです」
果たせるかな、総務省は6月27日、大学教授などで構成する有識者検討会を設け、自動車を持つ人が地方自治体に毎年払う自動車税と軽自動車税(今年度見込みでトータル1兆7349億円)を、同じく'15年から増額すべく検討に入った。
これぞ、購入時に自治体に納める自動車取得税(同1900億円)の廃止に伴う、究極の穴埋め策にほかならない。ディーラー関係者は冷ややかだ。
「自動車各社は『何のための取得税廃止か』と猛反発している。政府は環境に与える影響が大きい車ほど税率が高まる案を示して切り崩しを図っており、取得税とほぼ同額の保有税を確保する穏便策もチラつかせています。しかし、環境ウンヌンとなれば、最もトバッチリを被るのが二酸化炭素の排出量が多い高級車。逆に最も恩恵を受けるのはHV車で『政治力に長けたトヨタ、ホンダが政府にシッポを振るのは時間の問題じゃないか』と陰口する向きさえいます。EVの日産? 予想外の販売不振でゴーン社長に泣きが入っていますからね。厳しいに違いありません」
前述した通り、HVで先行したトヨタ、ホンダを尻目に、日産はEVに活路を求めていたが、目標とする「世界200万台」には遠く及ばず、まだ5万台に低迷している。これに焦ったゴーン社長はダイムラー、フォードと連合してFCVの共同開発に踏み切ったとはいえ、EVに見果てぬ夢を追いかけた分、遠回りのロスは大きい。同じことはEV実用化で先陣を切りながら、まだ業績回復のストーリーさえ見えてこない三菱自動車にもいえる。
「今ごろ、トヨタの豊田章男社長は、さぞ含み笑いをこらえるのに懸命でしょう」と、トヨタ・ウオッチャーは指摘する。
「彼がEVを手掛けなかったのは、その将来性に疑問を抱いていたからだと解説する向きがいますが、実際は全く違う。プライドだけは滅法高いから日産の真似だけはしたくなかったまでのこと。もし日産がEVで大成功していたら、逆に御曹司は天下の笑いものになっていたのです」
対照的に、迷走したゴーン社長の泣き顔がチラついてくる。