どの道、ユーザーである国民の反発は避けられない。とはいえ、知恵者揃いの東電マンのことだ。企業存亡のためには手段をウンヌンしている場合ではなく、だからこそ灼熱地獄の到来を前に、2年前にとった奇策復活=計画停電の再現を危ぶむ声が急浮上しているのだ。前出・東電ウオッチャーが言う。
「東電が公表した7〜8月の電力供給量は火力、湯水力などをフル稼働した場合の最大値で、当然ながら定期検査などで休止している発電所の分はカウントされません。日々の供給量は天気予報を踏まえて変化する仕組みで、もし記録的な猛暑が続けば需要に追いつかなくなり、計画停電が現実味を増す。しかし、第三者が需給のバランスを読み取るのは不可能です。そこに作為的なものが働かない保証はありません。まして東電は原発再稼動での延命策に汲々としている。嫌でも耳元で悪魔が囁く図式なのです」
果たせるかな、東電への不信感をあらわにした泉田知事は「この会社は信じられない」とまで言ってのけた。電力事情が切迫したことを錦の御旗に、計画停電に訴えたとしても、本当のところはわかりにくいのが実情だ。
市場関係者は、もっとうがった見方を披瀝する。
「世の中は必ずしも需要と供給のバランスで決まるとは限りません。最初から供給の量を意図的に減らしておけば需要が殺到して価格が高騰する。それと同じで電力の供給量を絞り込んでおけば、猛暑の中で本当に停電しかねません。いわば計画停電ではなく“計画的な停電パニック”です。こんなことが1カ月に5〜6回も続けば、反原発の面々だって『電力の安定供給は不可欠。安全性が担保されるなら原発は必要じゃないか』と思ってしまう。まあ、そこまで露骨にやらないにしても、優秀な人材が揃った東電ですからね。今夏の正面突破策に抜かりはないでしょう」
折しも首都圏が記録的猛暑に見舞われた7月8日午後2時ごろ、東電の電力需要は4906万kWを記録した。まだ“危険水域”まで多少の余裕があったとはいえ、この酷暑が続くようだと、原発ゼロの東電が悲鳴を上げるのは必至だ。
“計画的停電”の甘い誘惑に忍び寄ろうとする東電から、いっときも目を離すわけにはいかない。