5Gが実現され、IoT技術が普及すると、家電製品や車などさまざまなモノがインターネットに接続され、モノの相互通信・データ収集が実現する。米国が警戒している点は、中国の5Gの軍事利用だ。米国の懸念は一国にとどまらない。英・仏・独・日の情報機関の情報漏洩を防ぐこともある。
「14年、欧州のモバイル市場におけるエリクソンのシェアは40%強でトップでした。同年の時点でファーウェイは26%前後でしたが、その4年後の18年にはエリクソンを抜いて約40%のシェアを握り、首位に躍り出ています。ZTEは約10%ですから中国の2社だけで市場占有率50%と過半を制したのです。ファーウェイを巡る米中の闘争は欧州にも波及していますが、問題は欧州市場を独占してきたファーウェイなど中国企業抜きで、欧州が独自の5G網を設置できるかです。ドイツの大手通信関係者は、ファーウェイ抜きでは欧州の5G網の構築は少なくとも2年遅れると懸念していますからね。今欧州の通信市場はジレンマに陥っていますよ」(欧州在日本人ジャーナリスト)
欧州各国の抱える懸念は大きく2つだ。①ファーウェイはどれだけ危険か。②欧州市場に定着した中国企業をどのように追放できるかだ。が、
「オーストリアはこういうスタンスです。セキュリティーの危険性という危惧に対する証拠はないので、過剰反応する具体的な理由はないと。同国政府はファーウェイとは契約を結んでいませんが、同国の通信大手『TMobile』は完全に中国企業に依存していますからね」(同・ジャーナリスト)
ファーウェイに代わって世界最大のコンピュータネットワーク機器開発会社、米国のシスコを利用する手もあるが、多くの欧州諸国は「米国も中国と同様だ。通信網を情報活動に利用する点で米国は中国と同じだ」と警戒感を隠していない。
それでは欧州生まれのエリクソンやノキアはどうか。2社は技術的には問題ないが、中国企業との戦いではすでに完敗している。なぜならば、中国企業は国家の補助金を受けており、価格競争で欧州勢は太刀打ちできない。
一方、米英豪加NZという「アングロサクソン連合」の一角、オーストラリアはファーウェイに完全に篭絡されている。豪政府高官3人を「取締役」に雇用し、高給を支払って事実上の代理人を務めさせ、オーストラリア市場の拡大に協力させてきたのだ。
「孟晩舟CFOも05年10月から11年8月まで『ファーウェイ豪』の取締役を務めており、中国と豪の間を行き来していました」(国際ジャーナリスト)
欧州や豪州のファーウェイ駆逐は、もはや手遅れだ。