実は福島の事故以来、日本の原発3社は世界の受注競争でご難続きだ。日立は昨年3月、リトアニア政府と原発建設で合意。納入が確実視されたのもつかの間、年末になって建設の是非を問う国民投票で反対多数となり、計画は実質的に凍結された状態なのだ。2020年度に、原発事業の売上高(3600億円)の半分を海外で稼ぐシナリオを描いていた同社にとっては、大誤算でしかない。
原発大手の米ウェスチングハウスを傘下に持つ東芝も、また然り。トルコでの受注をほぼ確定させていた矢先、運営支援で合意していた東電が原発事故で撤退したことから、トルコ側の意向で計画は白紙となり、現在は韓国企業と受注を競い合っている状態だ。三菱重工も仏アレバと連合軍を組んでヨルダンでの原発受注を目指しているが、こちらはロシア企業が強敵である。
そんな折も折、アジアで50兆円超のビッグビジネスが浮上したのだ。舌なめずりした3社首脳が、政府に“原子力村”の結束を働きかけないわけがない。
道理で経済産業省が“村人”に好都合な判断を下したわけだ。訪米した安倍首相がオバマ大統領に「ゼロベースでの原発見直し」を公言したのも、政府の規定方針に沿ったまでのことなのである。
しかし、原発がどれほど魅力的なクリーンエネルギーであろうと、大きなリスクと隣り合わせであることは経験済みだ。まして大気汚染まみれの中国で“粗悪”な原発が56基も建設されれば、いつどんな事態に陥らないとも限らない。
「脱線して落下した高速列車を地中に埋めて隠蔽した国ですよ。もしも福島に匹敵するような大惨事に見舞われた場合、どんなトンデモナイ後始末をやるか想像もつきません。原発を次々と地中に埋めでもしたら、もう笑い話では済まなくなります」(経済記者)
安倍政権が原発再稼働に舵を切るのは間違いない。情報筋は「そのバーター条件として電力会社に発送電分離をのませるシナリオが囁かれている」と打ち明ける。電力=原発をめぐるドロドロの人間模様が、にわかにキナ臭くなってきた。