「社長のご満悦ぶりから見て、6〜7割近い割引率を勝ち取ったのではないか」(航空アナリスト)
追い風となったのはボーイング787で相次いだバッテリーの発火問題である。日本市場はボーイングの牙城だったが、これに乗じてエアバスが猛然と切り崩しを図った結果、昨年秋に日本航空がエアバス機31機の導入を決めた。ドル箱市場に風穴を開けられたボーイングが危機感を募らせないわけがなく、ANAに対し「空前の営業攻勢を仕掛けた」(関係者)という。
これを知ったエアバスが執拗なトップセールスを仕掛ければ、今度はボーイングが巻き返す。両陣営をギリギリまで競り合わせた結果、ANAは大量発注を条件に予想外の果実を得た図式である。
「世間的にはライバルを競わせて好条件を引き出したANAの独り勝ちの印象が強いですが、本当の勝者というか、役者はボーイングが一枚も二枚も上手です」(前出・アナリスト)
どういうことか−−。実はANAが商談をまとめる直前、米連邦航空局は問題のボーイング787型機について「安全性に全く問題はない」との調査結果を発表したのだ。
アナリストが続ける。
「ボーイングは米国防衛産業の担い手ですからね。政府が素直に“クロ”というわけがありません。ANAはその片棒を担がせられた格好ですよ」
何を隠そう、ANAがボーイングから購入する40機のうち、14機は件の787型機である。このトラブル機が日本の空を飛ぶころ、本当に安全性が確保されているかは神のみぞ知る、だ。