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〈企業・経済深層レポート〉 三重苦のテーマパーク業界[埼玉・飯能]ムーミンランド大コケの気配

 東京・池袋駅から約50分、埼玉県・飯能市の宮沢湖周辺にある通称“ムーミンランド”と呼ばれるレジャー施設「メッツァ」が、本格始動した。

 メッツァは、北欧のライフスタイルが味わえる入場無料エリアの「メッツァビレッジ」と、フィンランドの作家トーベ・ヤンソンが小説や絵本で描いた『ムーミン』の世界観を体験できるテーマパーク「ムーミンバレーパーク」の2つのエリアに分かれている。2018年11月に「メッツァビレッジ」が先行でオープンし、3月16日に「ムーミンバレーパーク」が、オープンする運びとなった。

 ムーミンランドがあるのはフィンランドのみで、それ以外では日本が世界初。そのことからも、ムーミンファンの期待度はかなり高い。多くのファンが訪れ、盛り上がりそうな気配だ。

 しかし、業界関係者の間では「バレーパーク次第では、ムーミンランドは大コケしてもおかしくない」という声が少なくないという。

 「最初こそ多くのムーミンファンで賑わうと思います。しかし、テーマパークはリピーターを作れるかが業績の明暗を分けると言われています。賛否両論ありますが、ムーミンバレーパークがリピーターを作れるほどの力があるとは、現状、あまり感じられません」(業界通の経営アナリスト)

 一体、どういうことなのだろうか。ムーミンランドが賛否両論あるのは、独特のコンセプトに理由があるという。

 パーク内は大きく分けて「はじまりの入り江」「ムーミン谷」「コケムス」「おさびし山」の4エリアがあり、レストランやカフェなどの飲食店、グッズショップ、アトラクション、展示施設などが点在している。おさびし山エリアには、往復約400メートルの宮沢湖面を滑空する「飛行おにのジップラインアドベンチャー」というアトラクションがあるものの、多くのテーマパークのようなアトラクションはほとんどない。

 「穏やかなムーミン谷の世界で、ムーミンの物語を追体験ができるというのがムーミンバレーパークのコンセプトです。これまでハードなアトラクションが多かった国内テーマパークとは一線を画し、期待もされていますが、それだけにどれだけの人が満足するのかは未知数です」(テーマパーク業界関係者)

 不安要素はこれだけではない。そもそも、テーマパーク業界自体が下火だという。

 「テーマパーク業界は、多様化、少子高齢化、消費低迷の三重苦で、かなり厳しい。アベノミクスが好調といってもテーマパークが絶好調時のバブルの頃とは勢いが違います」(観光業界関係者)

 一部を除いて、ほとんどのテーマパークはバブル期を境に転落している。

 「1990年に福岡・北九州市で、宇宙をテーマにした『スペースワールド』が開園しました。1997年度には、来場者数が年間216万人に達し隆盛を誇りましたが、徐々に入場者が減り経営が悪化。2004年3月期には351億円の累積損失がありました。そして2005年7月に、営業権をリゾート運営会社の加森観光に譲渡したのです」(観光事業関係者)

 加森観光は、経営に行き詰まったリゾート施設を買収することによって事業を拡大した。いわば、リゾート再建のプロである。

 一時は業績も回復したが、それでも客足は遠のき、スペースワールドは2018年の元旦で長い歴史に幕を閉じた。

 長崎・佐世保市にあるテーマパーク「ハウステンボス」も苦しい経営が続いている。

 「ハウステンボスは1992年に、2000億円規模の費用をかけて開園。当初は、350万人もの入場者数を誇りましたが、その後は立地の悪さとイベントのマンネリなどから客足が激減。経営に行き詰まり、2003年には民事再生法を申請しています。2010年には、名経営者の澤田秀雄社長率いるHIS(エイチ・アイ・エス)が経営再建に乗り出し、世界最大のイルミネーション(約1300万球)が話題を呼び一時は持ち直した。しかし、2016年の熊本地震をきっかけに客離れが加速して、再び経営が厳しいともっぱらの噂です」(同)

 2017年、愛知・名古屋市に新設された「レゴランド・ジャパン」も、開業半年で入場者数100万人は達成したものの、年間200万人には届かず、入場料の値下げを余儀なくされている。

 奇跡の大復活をした大阪の「USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)」や世界屈指のテーマパークとして定着した、千葉・幕張の「東京ディズニーランド」などを除けば、どこのテーマパークも厳しい経営なのが実情だ。

 ムーミンランドは、従来のテーマパークを逸脱した路線で、果たして生き残れるのだろうか。

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