髙橋はペナントレース再開となった6月28日のDeNA戦で「1番レフト」でスタメン出場を果たし、プロ初アーチ。プロ7年目でようやくその才能を開花させた。今さらだが、髙橋は2012年のドラフト1位、同年2位が目下、4番を務めている鈴木誠也である。
「髙橋の(一軍での)プロ初安打も昨季で、同期の鈴木に完全に水をあけられていた。松山、長野らレギュラーを予定していた外野手の不振が長引いているだけに、髙橋の成長は大きな収穫」(プロ野球解説者)
一方、新人の小園だが、昨季1番を任されていた田中広輔の調子がイマイチだったため、チャンスが回ってきた。
その小園が田中に代わってショートのポジションに入ったとき、広島の守備態勢と「野球施設」について考えさせられた。
広島の二遊間は深めに守っている。他球団よりも「後ろ」で守るのだ。セカンドの菊池涼介もそうだが、ショートの小園もそういった傾向にある。守備位置が後ろになれば、おのずと守備範囲も広くなる。スーパープレーを連発している菊池の守備を見れば説明するまでもないが、自分の脚力と肩の強さに自信がなければ、後ろで守ることはできないのだ。
しかし、ショート・小園は事情が違う。セカンドとショートでは、一塁までの送球距離があまりにも違いすぎる。ドラフト候補だったころから「堅守強肩の遊撃手」と報じられていたが、外野の芝生に足が掛かりそうなところで守っているのを見せられたとき、「肩の強さに自信がなければできない」と思った。
本当に肩の強い選手がなかなか現れないのは、学生やアマチュアが使用する野球施設にも理由があるのではないだろうか。
広島の本拠地・マツダスタジアム(MAZDA Zoom−Zoomスタジアム広島)は、内野エリアにも天然芝が敷き詰められている。この天然芝の内野は、想像している以上にゴロの捕球が難しいのだ。打球は、土や人工芝のグラウンドとは比べ物にならないほど失速する。失速するから、前進しなければならない。バウンドも不規則だから、捕球する最後の瞬間までボールを見なければならない。また、バットの芯で捉えた打球がヘンに加速することもある。そのため、後方に守って、フットワークを使って捕球し、かつ一塁まで速いボールを送らなければならなくなる。
アメリカの野球場には天然芝が敷き詰められている。肩の強い内野手が育つのは、施設の違いによるところもあるのではないだろうか。小園の出身校・報徳学園は土のグラウンドだったが…。
広島には「素質」を感じさせる若手が多い。正遊撃手・田中も、小園に触発されたのか、1番を任されていた昨季の勢いを取り戻しつつある。髙橋の活躍を見て、松山、長野、野間ら外野手たちも「このままではヤバイ」と思っているはず。低迷脱出への最善策は、緒方監督が慌てず、ガマンして「待つ」ことではないだろうか。
(スポーツライター・飯山満)