経済アナリストが言う。
「GM本社などがある中心部は、今も高層ビルが林立しているが、街の4割の街灯は補修もされず消えたまま。殺人事件も年間400件を超える暗黒タウンと化しています。原因は自動車産業の不振と人件費の高騰で、関連工場が他州に移転したため。税収が下がり公務員や警察官、消防士らが減ったことで治安が悪化し、180万人いた市民が約70万人になってしまったのです」
米自動車産業が衰退した理由は、'80〜'90年代に起きた日本車との競争に敗れたため。リーマンショックが追い打ちをかけ、GMなどが破綻を迎えたが、政府支援でこれら自動車会社が再建を果たしたものの、街の復興には遠く及ばなかったというわけなのだ。
ただ、同市の破綻は米国のみならず日本にも思わぬ影響を及ぼし始めている。安倍政権は、今年10月にTPP(環太平洋経済連携協定)参加の基本合意をまとめる見通しだが、これが暗転する可能性が指摘され始めているのだ。
「デトロイト市のあるミシガン州では、以前から知事や州選出の上院議員が日本のTPP参加に大反対。今後はデトロイトの再建を担う同州がさらに猛反発することは必至で、悪くすればTPP参加自体が暗礁に乗り上げる可能性もあるのです」(経済アナリスト)
また、総務省関係者はこう語る。
「2兆円近くの借金策に取り組むミシガン州は、今後、米政府に支援を求めるはず。すると、米政府は日本のTPP参加は容認しても、260兆円に及ぶ簡保資金を解放させるなど、どうにか借金を肩代わりさせようと目論む可能性が高い。安倍政権にすれば、TPP参加が痛しかゆしの状態となることが危惧されているのです」
対岸の火事ではない。