同番組は、「ザ・コインロッカーズ」というガールズバンド39名の成長に完全密着したドキュメンタリー。“夢は弾いて叶えろ!”を合言葉にした10代の女の子たちが、日を追うごとに生まれていく差、適性チェックで厳しい言葉を運営側から投げられながらも、努力と根性で乗り越えようと必死だ。
スタジオでVTRをモニタリングしているのは、小籔千豊と藤本敏史。藤本はコンビ名の「FUJIWARA」が肩書だが、小籔は「吉本新喜劇」。ここに、座長というプライドを感じさせる。それは、番組の随所でも垣間見られる。
小籔といえば、この数年は座長、俳優、モデル、MC、コメンテーター、バンドほか多くの仕事に恵まれ、高い評価を得てきた。そのすべては本人の言葉を借りれば、「吉本新喜劇を全国に広めるための広報活動」。この芯は、売れた今なおブレていない。
ザ・コインロッカーズは基本、楽器未経験者でもOK。ところがその場合は、経験者との差がどんどん開いていく。思うように弾けない女子が運営側からダメ出しされると、「未経験でもエエ言うたの、そっちやん」と、小籔は女子の立場に立つ。視線は座員なのだ。
その上で、17年からバンド「ジェニーハイ」の一員としても活動しているため、音楽演奏者の気持ちもわかる。担当は、ドラム。メンバーのベースは野性爆弾・くっきー、ボーカルはtricot・中嶋イッキュウ、キーボードは音楽家の新垣隆、ギター&プロデュースはゲスの極み乙女。& indigo la Endの川谷絵音。かなり本格派のため、「楽器はヘタでも練習すれば絶対にうまくなる」と、エールを送ることも忘れない。
座長として、バンドマンとして、ザ・コインロッカーズを他人事と思えない小籔の言葉は重い。「おっさんから言わせてもらいたいけど、みんな仲よぉしてもらいたい。新喜劇を見てて、いがみ合うヤツは組織の中に入れたくないんです。友だちが上行ったとき、手を叩けるけど、あの子に負けへんようにがんばろかという子ばっかりやったら、めっちゃええグループになります」と経験談を口にする。その上で、「同期は仲良く。後輩には優しく。先輩は殺す。これが僕の座右の銘です」と語る。
それに対して、ツッコミを入れるのは藤本。「ザ・コインロッカーズと吉本新喜劇を一緒にすんの、やめてくれへんかな」と笑うと、「一緒ですよ。泣いてる女の子、『怖かった』って言うてたの、(未知)やすえ姉さんと一緒や」と、吉本新喜劇の看板大御所女優の持ちギャグ「怖かった……」を出し、笑いを取った。
現在、吉本新喜劇は60周年記念ツアーの真っ最中。小籔のあふれる新喜劇愛、変わらぬ広報活動は、MXというニッチなテレビ局の番組でも健在なのだ。
(伊藤雅奈子)