小学生の頃、遠足の時に乗っていたバスが事故に遭いました。幸い、大きな事故ではなく死人も出なかったのですが、急ブレーキの衝撃で頭をぶつけて傷を負った子もいたり、子供ながらとても怖かったです。それで車中がパニックになる中、私の隣に座っていた女の子が嘔吐してしまったんです。多分、元々乗り物酔いしやすい子で、事故の動揺が重なり吐いてしまったんだと思います。その子は必死に手で口を押さえていましたが、溢れ出る嘔吐物が彼女の膝や床に落ち、肌色の物が溜まっていたのを覚えています。
その記憶は今でも鮮烈に脳に焼き付いており、嘔吐物を彷彿とさせるものを見ると思い出してしまうようになりました。そのため、私はもんじゃ焼きだけは絶対に食べられないんです。味などは関係なく、あれを見ると当時の恐怖や彼女の嘔吐しか浮かばなくなり食事どころではありません。
そんな中、ある男の人と付き合った時のこと。彼は月島の近くに生まれたため、何かと私をもんじゃ焼き屋に連れて行こうとしました。それでトラウマのことを話して無理だということ伝えたのですが、彼は「そんなの気の持ちようだから。気合いで何とかなるはず。俺もピーマン嫌いだったけど克服した」と好き嫌いのレベルで話をし始めました。それでも拒否していると、彼は私の家にわざわざホットプレートを持ってきて、市販のもんじゃ焼きを調理。それを見て私は気持ち悪くなり涙を流しているのに、無理に食べさせようとしてきたのです。その時の強引さや表情は本当に怖かったです。その日以来、彼とは距離を置くようになりましたね。
写真・Yuya Tamai