'10年1月、本田はCSKAと「年俸3億円で4年契約」を結んだ。CSKAはVVVフェンロ(オランダ)に移籍金900万ユーロ(当時のレートで12億円)を支払って獲得したのだが、本田との契約には「他クラブへ移籍する際は最低移籍金1600万ユーロ(16億円)」という条項が盛り込まれているという。
これまでリバプールは16億円が用意出来ず、断念せざるを得なかったのだが、事情が変わってきた。
現在のサッカー界はマンチェスター・シティーがUAEの投資会社の経営権を獲得し、プレミア優勝につなげた。バルセロナ(スペイン)やパリ・サンジェルマン(フランス)もカタールの投資会社が経営に参画、最強チームを堅持している。いずれも年間補強費は100億円を超す。
リバプールの経営陣もまた中東の投資家にクラブの売却を考えており、本田獲得の資金繰りの裏付けを得たというのだ。
一方、今年1月に「移籍金14億円」で契約寸前まで交渉が進んだセリエAのラツィオ(イタリア)は事実上消滅。セリエAは昨年来の八百長疑惑で逮捕者が50人を超え、業を煮やしたイタリアのモンティ首相は「完全に膿を出し切るには、リーグを2〜3年休んだ方がいいのでは」と話すなど、今季は開催さえ不透明。とても移籍話どころじゃないのが実情だ。
その点、リバプールは今季からロジャース新監督を迎え、これも追い風になっている。ロジャース氏は名将モウリーニョ(レアル・マドリード監督)の秘蔵っ子で、モウリーニョ監督時代のチェルシーでコーチを務めた側近。そして本田の究極の目標は「レアル・マドリードの10番」。
本田がリバプールで活躍すれば、ロジャース−モウリーニョのラインに乗ってレアル移籍への道が拓ける、という構図である。
全国紙ベテランサッカー担当記者が話す。
「マンチェスターとリバプールは、1970年代から'80年代にかけて三菱ダイヤモンド・サッカー(東京12チャンネル)で欧州サッカーを知った私たち団塊の世代にとっては、まさしく雲上のクラブ。わずか50キロしか離れていない両クラブの対戦はテレビ画面で観ていてもサポーター同士のライバル心が強く、最も燃えたぎるカード。日本のツートップがそこでプレーするようなことになれば、熟年層のサッカーブームが沸騰する。金子勝彦アナの名調子でマンU香川×リバプール本田の対決をみてみたい、というオールドサッカーファンはかなりの数がいると思います」