アノ人とは、故・木村拓也内野守備走塁コーチ(享年38)のこと。巨人は故人を偲び、今季はその後任を置かなかった。
「球界全体を見渡しても、内野守備を教えられる適任者は多くありません。昨季終盤、巨人が木村氏に『コーチ転向』を打診したのもそういった事情があったからです」(チーム関係者の1人)
その後任に噂されていたのは、2人。1人は埼玉西武ライオンズの鈴木康友・内野守備走塁コーチ(51)だが、こちらは「渡辺久信監督(45)の『辞任説』が本当だったら…」という条件付き。渡辺監督の続投表明が正式に出されたことで、鈴木コーチの巨人復帰はなくなった。
また、川相昌弘・中日二軍監督(46)の帰還説も囁かれている。「川相の巨人帰還の可能性はかなり高いですよ」(中京地区メディア陣の1人)
川相・二軍監督の今シーズン限りでの退団はすでに発表されている。しかし、意味シンなのは、そのときの川相本人のコメント。「新聞報道で自らの去就を知った」と言うのである。中日は9月28日に同氏を球団事務所に招き、契約解除の旨を伝えた。中日は筋を通しており、「その前に情報が露呈した」と言った方が的確だが、中日選手内における同氏の評判はむしろ良かった。いまだ、「何故!?」と、報道陣に“逆取材”してくる選手もいるくらいだ。
「川相は今後について質問されると、自分の育てた選手の活躍をテレビ観戦したいと語っていました。つまり、教え子とは中日選手のことで、この時点で他球団との交渉はなかったと見るべき」(前出・同)
プロ野球界では、フロントが契約解除の旨を伝える際、その理由を言わないのが慣例となっている。川相氏も球界の仕来りを分かっており、「理由は聞かなかった」(退団会見)と述べている。
「巨人が川相を引き抜こうとしたんじゃないかな? 川相本人にその気があったかどうかは分からないが、それで中日が『来季の契約は結ばない』と言い放ったのでは…」
そんな“憶測”も飛んでいる。その真偽はともかく、堅実なプレーに定評のあった川相氏は、数少ない内野守備コーチの適任者であるが、こんな情報も聞かれた。
「川相サンは読売を捨てた人。帰還はできないと思う…」(関係者)
川相氏が中日に移籍したのは03年オフ。同年での現役引退を東京ドームで発表したものの、原監督も引責辞任することになった。川相氏の引退はコーチ転向を前提としたものだったが、巨人フロントは「後任監督が決まらない以上、コーチスタッフを先に発表できない」とし、川相氏を“放置”してしまった。この事務的な対応にカチンと来たのか、現役続行に一変。落合博満監督に拾われ、今日に至った。
「原監督の後任に決まった堀内(恒夫)氏との不仲も影響したようですね。川相はコーチだったころの堀内氏に理不尽な鉄拳制裁を食らったなんて話も聞いています」(前出・同)
その通りだとしても、今の巨人には堀内氏はいない。原監督とは信頼関係も厚いという。『帰還』が難しい理由は分からないが…。
「野球のライバルは阪神、でも営業面(本社)でのライバルは中日です。かつてFA残留したのに、中日に移籍しようとしただけで本社から睨まれ、いまだコーチ就任できない元巨人投手もいますからね。そういうしがらみを原監督が解消できるのかどうか?」(同)
原監督は現役時代をともにし、FA退団した元同僚にキャンプでの臨時コーチ役を要請してきた。彼らの巨人帰還のための下準備だという。しかし、原監督は今季、4連覇を逃し、強い発言力は持てないだろう。このまま、内野守備コーチは川相氏に決まるのか。それとも、適任者を他に探してくるのか…。原監督が乗り越えるべき山は、クライマックスシリーズだけではないようだ。