これはもちろんユースケたちの冗談だったのだが、お年寄りも多く見ている番組だけに、井ノ原が降板すると勘違いしてしまう視聴者が続出。エンディングに紹介されたFAXには「さっきから80歳になる母が何度も『この人に司会が代わるんだってさ……。イノッチさんでよかったのに』って残念がってるんですけどぉー」「今、茶の間に行ったら、あさイチを見ているうちのおふくろが、『イノッチが司会じゃなくなる』と、悲しんでおります」と視聴者の嘆きの声が伝えられた。この事態を受け、ユースケは「お母さん! 嘘を言ったつもりはないんです。ちょっとした冗談を言ったつもりでした。本当に申し訳ありませんでした」と、井ノ原と共に頭を下げながら謝罪。直後に有働由美子アナが「司会は代わりませ〜ん!」と絶叫して番組は終了した。
そんなユースケは、他のバラエティ番組でも、適当すぎる自由なキャラクターが視聴者から愛されているが、その裏では常に怒りの感情を抱いている男でもあった。
本人曰く「バカみたいな名前だから」と自分の芸名を改名しようとしていた時も、怒りがキッカケで思いとどまった過去がある。
「俺が付けたんじゃねーから。ユースケ・サンタマリアなんてどうかしてるよこんな名前。変えようと思ってたらプロデューサーに『この名前でやんの?』って笑いながら言われたのよ。カチンときちゃってさ、やります! って。え、やめたほうがいいすか? つったら『いやいや、面白いからいいんだけどね』とか言われてさ。これで行きます! とかやっちゃったのよ、俺は。ほんで今に至っちゃった」
また彼は、バラエティでの明るいキャラからは考えられないが、本当は寡黙な男に憧れているとも明かしている。それだけにお喋りな共演者とは距離を取っているという。
「うるせーもん。喋る人って。(略)俺こんだけ喋ってて、だから本当、すごく切ない話なんだけど、やっぱりさ、あんま喋んない奴、かっこいいと思う。単純に。(略)ただ、ぺちゃくちゃ喋る人、もうちょっとダメ、俺。ふふふふ。人の振り見て、じゃないけど、あ、俺こう見られてんのかなぁと思っちゃうもん。ダメだこりゃ、みたいな。だからそういう人がいると俺、貝みたいに口を閉ざして、前室からいなくなるから」
かといってユースケはそういう人間が嫌いなわけではないと前置きし「人間としてはいい奴なんだなと思うよ。すごいサービス精神が旺盛で、結局、俺と根っこんとこは一緒なんじゃねぇかと思っちゃうんだけど。最後まで現場いるし。はよ帰れや! みたいな。ふふ」と、苦手意識があると告白。
他には自身の出演舞台を観に来る客に対しても、怒りが湧くことがあるようで「みんなゲラッゲラ笑う。俺はすげぇ冷静に軽くムカついてんのよ。なんか雰囲気で笑ってね? みたいな。そういう風に思っちゃうわけ(笑)」「なんだよあのスタンディングオベーションなんか、取ってつけたようなのよ! みたいな。出んのやめよーよ! とか言って。(スタッフが)『いえ、出てください』みたいな。はぁー!? みたいな(笑) いや、本当にみんな心からやってくれてるのかもしんないよ。そういう人もいるだろうけど俺はそう思っちゃうの」と、明かしている。
それほどまで、常に何かの怒りを抱いていることに対して、ユースケは「やっぱネガティブ。でもそのネガティブを俺はパワーにしている部分があるから」「負のエネルギーだけをそのままにしておくとさ、負でしかないじゃん。だから俺、その怒りにパワーとか妬みのパワーとか、それだけを放出したら、すごい嫌な奴になっちゃうかもしんない。だからそれを、そのまま出すんじゃなくて、いい芝居とか、ちょっととんちのきいたこと言おうとか、そういうことに転化していくわけよ」と語り、あらゆる鬱憤を表現に変えて吐き出しているようだ。
「僕は『ユースケ・サンタマリア』として仕事をしているわけですが、普段の本名の僕は、それとはまたちょっとだけ違う人間です。つまり、ユースケになる時に、ある意味スイッチが入ったような状態になるわけです」
昨年、放送されたテレビドラマ「火の粉」(フジテレビ系)では、バラエティでのキャラとは真逆のサイコな役を演じきり、そのギャップで視聴者を魅了したユースケ。今後も、プライベートと仕事のスイッチを使い分けながら、多くの人々を惹きつけていくに違いない。
【参考】
・あさイチ(NHK)2017年7月14日
・酒井若菜と8人の男たち(キノブックス)
・文春オンライン ユースケ・サンタマリアが語る「ひょんなデビュー」と「仕事論」
(柴田ボイ)
※写真・Japan Music Entertainmentホームページより