朝日杯FSを快勝し、2歳王者に輝いたドリームジャーニーだが、血統は晩成型だ。父はGIで善戦を重ね、7歳の暮れに香港でGIを勝ったステイゴールド。母の父は菊花賞を制し、天皇賞春を連覇したメジロマックイーン。もちろん、長距離への適性も文句ない。
春の皐月賞、ダービーは折り合いの難しい繊細な気性がネックとなり、思うような実績を残せなかったが、秋初戦となった神戸新聞杯は折り合い名人の武豊に操られ、見事なパフォーマンスを披露。後方から大外を一気だった。
以前は右回りだと手前をかえずに走ってしまう不器用さを抱えていたが、直線半ばでその課題を克服するとさらに加速。半馬身差という着差以上の完勝だった。
レース直後、マイクを向けられた武豊が「軽く飛びましたね」と興奮気味に振り返ったほど。彼の脳裏にはディープインパクトの迫力がよみがえっていた。
その後の調整も順調そのもの。「体重は変わっていないけど、ガリガリだった春と違ってトモにもたくましい筋肉がついてきた。1週前追い切りも予定通りにいい動きだった」と池江寿師はうなずいた。
その1週前は11日、栗東坂路で800m54秒5、ラスト1F12秒9と馬任せにサッと流しただけだが、小気味いいフットワークで秋の風を受け止めていた。
大混戦の菊絵巻。展開ひとつ、その日の状態ひとつで勝ち馬が変わりそうな激戦だ。ここまで思い通りにきたといっても池江寿師の見通しは決して楽観的ではない。
「3000mだし、極端な競馬しかできない馬。スタートもいまひとつだからね。前残りの展開はつらいかも」
しかし、そこは鞍上が武豊だ。この菊花賞でも天才の手綱はさえ渡っている。内にササる悪癖のあったエアシャカールを内ラチぴったりからゴールへ導いた00年、無敗3冠というすさまじい重圧をディープインパクトとはねのけた05年。「武豊君は菊花賞の勝ち方を一番知っている。腕に託します。爆発してほしい」その歴史に新たな1ページが綴られる。
【最終追いVTR】DWコースで6F81秒8、上がり3F39秒1→12秒6。1週前に続いて今週も軽めのケイコ。ゴールまで馬任せだったが、直線では自らハミを取ってグイグイと前進した。春先はか細い感じに映った馬体も、今はたくましさが出てきた。充実一途。