と同時に密売人も現れ、ブツをさばく。大麻、覚せい剤、コカイン、ヘロイン、MDMA、スーパーボール…。薬物なら何でもござれの世界だ。店内ではアルコール類も出され、音楽がかかる。
気だるい雰囲気の中で参加者は思い思いに桃源郷の世界をさ迷う。そして昼過ぎの午後1〜2時には散会となるという。
2002年、麻薬取締部では地下室を造って大麻パーティーを開いていたスナック経営者を逮捕した。店の厨房にマンホールを設け、そこから梯子で地下室に入る構造だった。「地下室まで造っていたとは。あれでは外部の人間はまず分からない。よく考えたものだ」そう言って呆れるのは当時、捜査の指揮を執ったOBである。
六本木のパーティーは外国人が少なくないが、日本人だけのパーティーならネットで参加者を募集するケースもあるという。
「関東近辺の海辺の洞窟、郊外にある工場の廃屋。そうした場所に音響を入れ、薬物に酔いしれながら踊り狂う。参加者は100人から200人規模。残念だが、麻薬取締部の人員では対処できなかった」
OBは悔しがる。
このOBはかつてプロのサーファーを覚せい剤で逮捕したことがある。
「理由は恐怖感を克服することだった。サーファーはビッグウェーブを待っている。しかし、一歩間違えば呑み込まれて命を落とす。死と隣り合わせのスリルでしょ。その恐怖感を薬物で乗り越えていたというんです。薬物をやっていると、その時だけは無限の力を得たような錯覚にとらわれる。仕事の行き詰まりや上司との摩擦から、薬物をやっている時だけは逃れられる。本人は逃げだと分かっていても、一度はまるとなかなか抜け出せないんです」
有名大学の学生らが大麻で相次いで逮捕されている。大麻はタバコより害が少ないという意見もあるが、米国では15歳未満で大麻を乱用したことのある若者の多くが26歳以降、深刻な違法薬物乱用に陥っていることが報告されている。
「使用するうち、体内に薬物への耐性ができるんです。そうすると、体はより強い薬物を求める。大麻は覚せい剤などの違法薬物乱用の入り口になる恐れが高いということです」(OB)
ジェットコースターの行き着く先はまさに地獄の入り口なのだ。