「急に涼しくなると体調が変だ」と訴える人は少なくない。医療関係者も、この時季を“危険な季節”としている。
医学博士の内浦尚之氏によれば、健康な人でも気温の変化に対して、徐々にしか適応できないという。
「朝晩の冷えなどで、体温が1℃下がれば約37%もの免疫力が低下すると言われています。体の抵抗力が衰えて、ウイルスや細菌に対して負けてしまう。その上、自律神経のバランスが崩れ、血管が収縮して血液が詰まることもある。すると心筋梗塞を起こし、胸を締め付けられるような痛みに襲われ、ひどい時には意識を失います。脳の血管が詰まれば、脳梗塞で、ろれつが回らない、食事中に口から物をこぼす、物につまずくなどの予兆の後、倒れることがあります。また、軽度の人は階段を上がっただけで息切れを起こし、胸に痛みを感じる狭心症に陥ります」
このように、体が冷えることで血流障害などを起こし、正常な細胞に対しても不利に働き続け、体の組織に変性が起きて病気になってしまう。また、免疫を担っている白血球に対しても、免疫システムの崩壊を生じさせ、病気の段階が重度に進んでいくのである。
「体調管理や健康維持のためには、交感神経と副交感神経のバランスが重要なのです。この二つの神経が綱引きしながら働いて、体がバランスよく機能することが大事なのです」(内浦氏)
この綱引きのバランスが崩れ自律神経が乱れていると、病院で検査しても異常が見つかりにくい。自律神経失調症や不定愁訴症候群と診断されることも多く、精神安定剤や睡眠薬を処方されているのが現状だという。また、自律神経で悩んでいる人の特徴は、後頭部から首筋に突っ張るようなことがあり、頭の重い感じが続いて気分が沈みがちになるといわれる。
今年は猛暑だったせいか、例年以上に体のだるさを感じる人が多いようだ。この夏、都内の大手百貨店の紳士服売り場では、腹巻が大人気だったという。デパート広報担当者によると、特に宣伝したわけでも目立つ場所に置いていたわけでもないのに、6〜9月の売り上げは、前年同期比で7割増。さらに、食品売り場でも温かいおでんの売り上げがアップしたという。またある料理店でも、鍋料理の注文数が昨夏の10倍だったという報告もある。
「これも猛暑だからこそなんです」と言うのは、東京社会医療研究センターの村上剛主任。
「今夏の暑さでは、エアコンを苦手にする人もつけざるを得なかった。水分補給でも冷たい物を飲む。そのため、冷えた体を温めたかった人が多かったのだと思います。居酒屋さんでも、ビールがよく出た半面、日本酒のお燗したものを飲む人も結構いたようです」