県政奪還を狙う安倍自民党の水面下の動きが活発だ。翁長氏と対立してきた自民党は早々に佐喜真氏の擁立を決めている。
「もともと保守系では、沖縄の風雲児で元沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)会長の安里繁信氏が出馬を表明していたが、菅義偉官房長官、二階俊博幹事長との会談後に辞退の意向を示した。これにより分裂は回避され、自民党の推す佐喜真氏で一本化することになったのです」(政治部記者)
これに県政与党は、警戒の色を強めている。
「安里氏と菅氏らの間でどんな話し合いがあったかは分からない。ただ、安里氏が会長だったOCVBは官民で沖縄の観光・リゾート開発を推進する組織で、地元建設業界などと密接にかかわっている。この組織が早い段階からカジノを含めるIR事業を模索していたことを考えると、それが安里氏の出馬断念の材料に使われた可能性がある」(与党関係者)
沖縄のカジノ誘致を巡っては翁長知事が反対していたが、その前の仲井眞弘多知事時代は推進に舵を切っていた。
「そこには米軍普天間基地の辺野古移転を条件に、カジノ誘致という密約があったとも言われている。当時はその仲井眞氏、安倍首相、カジノ事業を積極的に進めるセガサミー、そして地元建設業界が組み、沖縄でのIR事業を描いていたとされます」(前出・記者)
その後の翁長氏の反対によりカジノ熱は冷めたかに見えたが、IR実施法が成立した直後の今年7月、中国やイギリスのカジノ関連業者が沖縄を訪問。さらにその後の翁長氏の死去による急きょの知事選裏で、再び誘致が注目され始めた。
「沖縄の経済は徐々に上向きになっているが、今年6月の有効求人倍率は全国最下位の1・13倍。この状況に県民はさらなる活性化を望んでいる。実際、求人が伸びているのは宿泊業、飲食サービスで、この分野の後押しが欲しい。そのため、地元へのカジノ誘致の持ち掛けが、自民候補者の票集めの材料にも使われると言われているのです」(地元住民)
沖縄県は日本列島の最西端に位置し、台湾や中国本土とも近接している。もしカジノが実現するとすれば、上海や台北の富裕層を2時間程度で沖縄へ集客することが可能だ。県民所得は47都道府県の中で最低水準となっている。沖縄経済は、米軍基地への食料品などの物資納入や地代収入に頼っているのが現状だ。
9月30日の県知事選で県民は「カジノ」を選ぶのか、翁長雄志知事の「遺志」を重んずるのか、こればっかりは票を開けてみなければ分からない。