近年、このプラークが崩壊しやすいものと、そうでないものがあることが判明している。プラークが柔らかく、プラークにマクロファージや炎症細胞が多いと崩壊しやすくなる。ただ、どういう人に崩壊しやすいプラークが多いかの詳細は、解明されていない。
そのため、自分の状態を確かめられないことになるが、急性冠症候群が疑われる症状があれば、すぐに対策を講じる必要がある。
東京社会医療研究センター理事の丸岡博之氏はこう説明する。
「私の知り合いで、肩の痛みで心電図を撮ったら心筋梗塞が判明、結果、心臓破裂の重症だったことがあります。急性冠症候群の特徴的な症状は、胸痛や息切れです。もちろん肩凝り、歯痛、腹痛、腕の痛みなどの症状を訴える人がいますが、今まで感じたことがない痛みがあった場合、循環器科のある病院で診察を受けることをお勧めします」
また、丸岡氏はもうひとつポイントを挙げる。それは“発汗”だという。冠動脈の狭窄(きょうさく)で、心臓のポンプ作用が弱まると、交感神経が心臓を動かそうとシグナルを出すと、交神経が優位に立ち、激痛がともない汗も出る。
これは不安定狭心症からくる症状だが、「症状が弱い」「しばらくして治った」という時も油断できないという。この病気は、対処が遅れると心筋梗塞に繋がるし、さらに対処が遅れれば死に至る。
「心筋梗塞の治療は近年、長足の進歩で技術は向上しています。早い段階で病院に運ばれれば、一命を取りとめる率は高く、病院内の死亡率は6%と低い。つまり、心筋梗塞の死亡の半数以上は“院外死”なのです。病院には早く行けば行くほどいいということ。心筋梗塞の発症から詰まった血管を再灌流(さいかんりゅう=再開通)するまでの時間によって、治療効果は大きく異なります」(同)
丸岡氏によると、最近の報告でも、150分の再灌流と90分以内の再灌流では、院内死亡するリスクは150分の再灌流の方が1.7倍も高い。カテーテル治療などによる再灌流は、搬送時間を含め120分以内が理想だと考えられているという。
「救急車で病院に運ばれても、検査やカテーテル治療、手術の準備などで、120分などは、あっという間に過ぎてしまいます。もちろんこの間に、救急救命士が、血栓溶解薬を静脈内投与し動脈を開こうとすることがありますが、とにかく体に異変を感じたら即通報。これが急性冠症候群から身を守る最高の手段です」
いずれにしても、冠動脈はコレストロールなどが沈着すると動脈硬化を起こしてしまう。冠動脈が塞がると、心筋の一部への血液供給が大きく減少し、閉塞の位置と量に応じて、不安定狭心症、心臓発作(心筋梗塞)が起きる。これで冠動脈が血栓によって詰まり、血液が2〜3分以上遮断されると心臓の組織が壊死し、死を呼ぶ冠性症候群が引き起こされるわけだ。
「肩や腰などの痛みが“いつもと違う”と少しでも感じたら、理屈抜きに、病院で検査を受けてほしい」
と、丸岡氏は重ねて強調する。