自衛隊をきちっと認めて、国防軍にするというのはいいし、強い国づくりを進めるという点もいい。しかし、個人的に、改憲草案には賛成できないところもある。
オレは、強い国を作るためには個人の自由を強くすべきというのが基本的な考えだ。ところが、日本では強い国を作ろうとすると、個人の権利を制限しようとする。自由意志の個人を拘束して集団として強くしようとする。同じ強い国づくりといっても、そういうところがアメリカやヨーロッパとは大きく違うところだ。
自民党の改憲草案は、個人の自由を制限する方向に持っていこうとするようにも読める。緊急事態条項も扱い方次第で問題になる。オレはそこは反対だ。党内でそういうことを言うんだけど、なかなか理解されない。
それは教育も含めて、普段からの国づくりの在り方でもある。強い個人の集合体として、結果として国全体が強くなるようにすべきだ。そうじゃないと、グローバルでは通用しない。日本は世界のどこに行っても活躍できるような強い人間を作るべきだ。
オレは、日本は個人が強くてめちゃくちゃやっている国だとは全然思わない。かなり個人の自由が束縛されて、うるさい国だと思っている。思想というより集団主義の文化のせいでもあるが…。戦前みたいに、たとえ国が強くても、窮屈で住み心地が悪ければ面白くないではないか。
それから、自民党の草案は、やたら家族とか家族の絆とか言い過ぎる。極端な話、離婚する人は憲法違反か、みたいなことになってくる。社会の絆、国民の絆とか、何だか絆でがんじがらめになってしまう。そうじゃなくて、自由に暴れる国民をいっぱい育てて、でも、決まったことはきっちり守るという、そんな国づくりがいい。
−−内閣支持率も堅調。安倍首相の政権運営に死角はないのでは?
安倍さんは自分に近い人を重用し過ぎるきらいがある。人事も生理的な好き嫌いで判断する傾向が強いのではないかな。感覚的に自分に合うか合わないかが強い。思い込みも強いと言われている。合わないと感じると対応が冷たいし、合うと思えば大事にする。
例えば、今回、比例で出てきた評論家出身の候補者なんかはそうじゃないかな。安倍さんと気が合うのだろう。すごく票を取っていたけど、あれは党本部が団体を付けていたんだと思うよ。そうじゃないと、あんなに票を取れるわけがない。
比例候補は、例えば医師会や郵便局長会などのような組織や利益団体の代表として出てくるから組織票が集まるんだけど、評論家はそういうのがない。そこで党本部が組織票をくっ付けるわけだ。いくらテレビに出ているとはいえ、個人の人気だけではそれほど票は取れない。
オレが出馬したときは投票まで1カ月くらいしかなかったから、当時の幹事長から「団体は全部使っちゃったから残ってないんだよ」なんて言われて、付けてもらったのは票になりそうもない社交ダンスの団体だった(笑)。それでも当選できたからよかったけどね。
(文中敬称略)
丸山和也(まるやま かかずや)
1946年兵庫県生まれ。東京の中心に法律事務所を構える。日テレ系人気番組「行列のできる法律相談所」レギュラー出演中の2007年、参議院選挙に自民党から出馬し当選。現在2期目。自民党司法制度調査会会長、参議院文教科学委員会委員長。「丸山総合法律事務所」代表。