『共震』(相場英雄/小学館 1575円)
東日本大震災発生から2年以上がたち、これを題材にした良質の小説が誕生した。作者は元時事通信社の経済部記者で、ジャーナリスティックな視点を創作に生かす確かな手腕を持っている。2012年に刊行されベストセラーになった『震える牛』はBSE問題を取り上げたミステリーだった。そして本書『共震』もまた、震災を表面的になぞるのではなく、ノンフィクション的アプローチで盛り込んだミステリーなのである。
2013年4月、宮城県の仮設住宅で殺人事件が起きる。早坂という県庁職員が何者かに毒殺されたのだ。この事件の犯人を解明するため、新聞記者の宮沢とキャリア刑事の田名部が行動を始める。特に2人で協力し合うというわけではなく、それぞれ別に調査を進めるのだが、時には接点が生じ、反目したり共感したりという微妙なコンビネーションで事件の真相へ迫っていくプロセスがスリリングである。いわゆる推理小説としての体裁、骨格に隙はない。
しかし、作者はもう一つ別の主眼も持っている。宮沢が記者であるという設定を生かし、彼の地道な取材が震災の復興支援という名目の背後に隠れた人々の悪行、いびつな偽善を暴くことになる。
昔から社会派ミステリーというジャンルはあるが、本書はその中でも特にリアリスティックで凄味のある小説だ。
(中辻理夫/文芸評論家)
◎気になる新刊
『井岡式 腹割りダイエット』(井岡弘樹/ワニブックス・1200円)
1カ月でオヤジのお腹を凹ませる! 元ボクシング世界王者・井岡弘樹が、お腹が気になる30代以上の中年に向けて、自身の体験をもとに『食事』『快便』『トレーニング』の本気ダイエット術を伝授。もう「デブ親父」とは呼ばせない!
◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり
ダイナマイトバディの金髪美女の表紙に吸い寄せられて手にとったのが『GLITTER』(トランスメディア/690円)。
表紙の女性はケイト・アプトンという米国のモデル兼女優。スリーサイズはB84・W63・H92。共和党議員を叔父に持つ由緒正しい家柄の出身らしく、雑誌の中身も海外セレブのトレンドを中心としたセクシーファッション情報が中心だ。
キャッチコピーが「エイジレスな女を目指す25歳から30代のアゲアゲ・マガジン!」というだけあって、紹介される靴も服も派手であり、メタリックなキラキラ系やレース付きランジェリーなど、刺激的というかエッチ…。なのでオヤジも十分に楽しめる雑誌だ。
街で見かける“推定年齢アラサー”の露出の高い女性は、こうした雑誌から情報を得ているのだろう。
最近の20代後半女性にとって、昔で言う“適齢期”は死語。まだまだ落ち着く年齢ではないらしい。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意