根尾は岐阜県飛騨高山市出身で、そこは親会社・中日新聞社のお膝元。ドラゴンズの戦力強化に寄与するとともに、新聞の販売拡張にもウルトラ貢献は必至。
「名古屋に本社を置く中日新聞社にとって、岐阜県は愛知県に次いで販売部数が多い準本拠地。髙木守道元監督が今なお球団に存在感を示しているのは、出身地である岐阜の新聞販売店より支持を得ているからです。岐阜では朝日新聞系の地元紙・岐阜新聞と激しい新聞拡張戦争が続いており、根尾獲得は大きな意味を持ちます。さっそく、白井オーナーは“新聞拡販”の大号令を出し、一気呵成に攻め入る計画のようです」(中日新聞関係者)
究極の作戦が、根尾の「二刀流」である。今シーズン、海を渡った大谷翔平(エンジェルス)がベーブ・ルース以来の二刀流として全米で大旋風を巻き起こしたのに続き、「今度は根尾が中日で」という胸算用だ。
ドラフト会議前日、「プロでは野手(遊撃手)一本に絞る」と“脱二刀流”を宣言していた根尾だが、ドラフト後は投手をやることに「ゼロじゃないです。力になれるなら、やりたいと思う」と、挑戦に意欲を示した。
「受験すれば、京大医学部の合格可能圏と言われる頭脳明晰な男。白井オーナーの二刀流の意図を酌み取っているのです。大谷の場合と違い、セ・リーグはDH制がなく、真の意味での二刀流1号となります。二刀流挑戦ならファンの興味を引き寄せ、年間指定席やチケットも売れる。この時期にそれを否定する必要はない。キャンプ、オープン戦までは二刀流で煽り、その結果を見て、公式戦でどうするかを決めようということでしょう。根尾は『思考の整理学』『論語と算盤』といったビジネス書を愛読するように、経営者の思考回路を持つ破格の高校生なのです。だから、理路整然とした指導者が絶対に必要ですよ」(地元放送局幹部社員)
根尾は小学6年時、球団の公式ジュニアチーム「ドラゴンズジュニア」に選出された、子供の頃からの中日ファン。ドラフトでは「どの球団が選んでくれるか分からなかったので、ほっとしました。小さい時からテレビを付ければ中日ドラゴンズさんの試合を見ていた。縁があると思いました」と素直に喜びを表現した。
両親はともに、診療所で20年以上にわたって地域医療に献身している医師。姉は看護師、兄は岐阜大医学部の3年生。そんな家庭に育った根尾は、先にも述べたが頭脳明晰、高校進学時には医学部のある慶應高校に進む選択肢もあったというが、甲子園優勝を目指して大阪桐蔭を選んだ。
そんな根尾だが、入団の条件について、金銭的な条件は口にしていない。「二刀流も含めて中日の球団方針に従う」と話すにとどめているが、打撃コーチだけは「しっかりした理論の指導者」と注文を付けている。
実は、中日の打撃コーチは決まっていない。退団した土井正博氏の後釜となる一軍打撃コーチなど、複数のポストがまだ未定なのだ。
「ドラフトで根尾を引き当てた場合と外した場合の、2パターンで人選していたからです。根尾を獲得できたことで“あの人”が現場復帰する可能性が浮上しました。根尾が少年野球の頃から憧れていた、常勝中日の落合博満元監督です。とはいえ、元監督を打撃コーチとして入閣させるわけにもいかず、球団は知恵を絞っています。総監督としてチームに帯同させるのが一つのプランですが、あの人のことですから、打撃コーチを買って出る可能性もある」(中日球団関係者)
「オレ流」の落合氏が実質総監督となれば、「二刀流」も現実性を帯びる。セ・リーグは、投手も打席に入る。ならば、「打者が投手をやってもおかしくはない」という、もっともな理屈だ。
また、フロント入りする森繁和前監督が、根尾の「専属投手コーチ」というプランも囁かれている。
今季、松坂大輔の獲得で観客動員数を大きく伸ばした中日。根尾が入団することで、来季はさらなる観客増が予想される。そこに、落合氏と森氏が指導して二刀流となることで、中日は笑いが止まらなくなる。
「二刀流が選手寿命を縮める可能性もありますが、落合氏なら『思い切って挑戦し、ダメなら医学部へ行けばいいじゃない』とクールに医師転身を勧めるのではないでしょうか。一方、球団は中日新聞本社の将来の役員ポストやドラゴンズ監督の約束手形を乱発しているという情報もあります」(スポーツ紙デスク)
こんな破天荒な選択ができるのは、12球団の中で何事にも常識にとらわれない中日だけ。このオフは、ドラゴンズの話題が独占することになる。