その吉田の「真の評価」を知らされたのは、ドラフト前夜、10月24日のことだ。「日ハムが根尾昂から吉田に乗り換えた」―、そんな情報が流れたからだ。
「日本ハムのドラフトは、至ってシンプルです。その年のナンバーワンを獲る、ただ、それだけですから」(スポーツ紙記者)
現場のニーズに合わない選手は見送るが、今年のドラフトは「野手なら、根尾。投手なら、吉田」と注目もされていた。吉田に乗り換えたとしても、何の不思議もないのだが…。
「日ハムの前日会議が始まったのは午後3時。終了したのは7時すぎですよ。直前になって、こんな長時間になるなんて、普通、あり得ません」(スポーツ紙記者)
日ハムの吉村浩GMは会議途中にスマートフォンを取り出し、ニュースをチェックした。ヤクルト、巨人も中日に次いで「根尾1位を表明した」ことを確認する。同GMは他球団の動向も最終判断に影響したことを明かしており、別の関係者は取材陣に「DeNAの1位は?」と逆質問していた。
この時点で、吉田1位の可能性をほのめかしていたのはDeNAだけ。「日ハムも吉田に乗り換えた」との情報が流れたのは、そのためだ。
しかし、夏の甲子園を終えたばかりの頃、大半の球団は「吉田1位」を匂わせていた。実際には「外れ1位」の入札でようやく日ハムが選択したのみ。評価は“急下落”していた。
「吉田くんの最大の武器は高めのストレートですが、プロ選手から空振りを取れるほどのものではありません。変化球の精度もさほど高くない。時間が経つに連れ、冷静にそう判断されたというか…」(球界関係者)
松坂大輔や田中将大のように「1年目から活躍してくれ」という期待は大きい。だが、身長180センチに満たない吉田のストレートには角度がない。よって、楽天・松井裕樹のように「一軍戦力になるまで3年くらいかかる」(同)と下降修正されたという。
「松井裕にはスライダーがありましたが、今の吉田には勝負球となる変化球がない」(ベテラン記者)
もちろん、高評価の声も少なくない。
「高卒即戦力投手には一つの傾向があります。松坂やロッテの涌井秀章らがそうだったように、牽制とフィールディングが巧いこと。吉田の守備力は甲子園で立証済みです」(スポーツライター・美山和也氏)
日ハムが4時間強も揺れたのは、「実戦の中で変化球の精度を高めていけば」との期待もあったようだ。
「吉田はU-18大会で評価を落としました。韓国戦で3ランホームランを被弾しましたが、自身の投球を過信していたのでしょう。プロの投手なら『様子見』でボール球から入るところ。そういう慎重さがまだない。力勝負の投球しかやったことがないと判断されたのです」(在京球団スタッフ)
巨人が前日に根尾1位を表明したのは、ファンを公言してくれた吉田への謝罪の意味も含まれていた。
精神力の強さは、折り紙付き。二軍の練習に耐え抜いて、大きな花を咲かせてもらいたい。