さらに、経済分野でも安倍首相に追い風が吹く。政府内に’20年は東証平均株価がバブル崩壊後の最高値2万4270円を大きく超え「3万円に近づく」との見方が浮上しているのだ。
米中貿易摩擦は中国による譲歩で世界経済の悪化懸念が後退。11月の米大統領選に向け、トランプ政権が政策総動員で株高を演出するのは間違いない。
安倍政権は消費税を10%に引き上げたが、大型経済対策とポイント還元策で消費の冷え込みを回避。東京五輪の経済波及効果も大きく「秋には3万円に乗せる」と睨んでいる。
改憲で対立軸をつくり、北朝鮮情勢と株価上昇、五輪成功の3点セットで内閣支持率を60%台に乗せ、衆院解散に踏み切れば、安倍首相が7度、国政選挙に勝利する道が開ける。4選の流れも確実になり、’24年9月までの任期と改憲が現実のものとなる。
もちろん、この政権運営が裏目に出る可能性も十分ある。政界は両刃の剣だ。
米中両国は関税を巡る「第1段階の合意」に至ったものの、あくまでも限定的な合意にすぎず、先送りされた問題を巡り、両国間の対立は深刻化。日本経済は、消費税増税の影響が想定より深刻となり、マイナス成長に逆戻りし、アベノミクスは完全に行き詰まる――。こんな展開もないわけではない。
野党による『桜を見る会』問題の追及と世論の批判の高まりにより、政権運営が行き詰まり、首相の求心力低下が顕著になれば、自民党内で「五輪花道論」が強まるのは必至だ。
そこまで急速に政権維持が困難になる流れは考えにくいとしても、首相の脳裏には4選に加えて、自力での改憲はもはや困難だと判断した時の禅譲も選択肢にある。その場合の後継者が自民党の岸田文雄政調会長であるのは間違いない。
首相は先の臨時国会真っ最中の11月、急きょ行った官邸記者クラブの各社キャップとの懇親会で「岸田さんには本当に頑張って欲しいと思っているんだよね」と心情を吐露した。
首相と岸田氏は当選同期で、選挙区が隣県ということもあり、初当選の頃からウマが合った。それだけで首相は岸田氏をポスト安倍の1番手と見定めて、外相、政調会長と、常に陽の当たるポストをあてがってきた。
しかし、「次の首相候補」の調査で岸田氏の数字は1〜5%程度と低迷。選挙の顔としての知名度や人気も上がらないことが難点だった。自民党関係者によると、首相は’19年の通常国会閉幕後、岸田氏と会食し「後継1番手」に考えていることを伝えた。その際、首相が岸田氏を後押しする条件として、改憲への全面協力と、岸田派内で力を握る古賀誠元幹事長との関係を見直すことを条件に挙げた。
岸田氏は古賀氏との関係見直しには即答しなかったが、憲法改正への協力は約束したという。首相は退陣する場合、細田派と麻生派、岸田派の3派で岸田氏を支援し、他のポスト安倍候補を圧倒する戦略を描いているとされる。
(明日に続く)