柔道は今年から世界ランキング制度が導入された。12年ロンドン五輪の出場権を得るには、同年4月末時点で男子は上位22人、女子は14人までに原則的には入っていなければならない。
国際大会はグランドスラム(GS)、グランプリ(GP)、ワールドカップ(WC)などに格付けされ、最上位のGSフランス国際は最もポイントが高い。それだけに、各国の強豪が集まることになり、ここで好成績を収めれば、優位に立てる。全日本柔道連盟(全柔連)関係者が言う。
「ベテランには厳しい制度。体力のある若手なら1つの大会がダメだったとしても、次を頑張ればと切り替えられる。しかし、ベテランはそうはいかない。狙った大会で確実にポイントを稼がないと練習計画もままならなくなるからです」
全柔連は昨年まで国際大会それぞれに、異なる選手を出場させていた。多くの選手に経験を積ませようとの配慮からだったが、今年は一変させた。ポイントを稼がせるため少数精鋭、1人を連続出場させている。
谷と同じ48キロ級の福見友子(23)をフランス国際、オーストリア国際(14日開幕)、ドイツ国際(21日開幕)と、立て続けに出場させているのがその典型。谷には、いつ引退しても構わないといわんばかりだが…。スポーツ紙デスクが証言する。
「谷は日本の柔道界では別格の存在。柔道人気を支えてきた功労者で、“チームやわら”とでも呼べる4、5人の練習パートナーと調整することを黙認していることでもそれがわかる」
チームやわらは練習どころか、国際大会にも帯同。谷が長く現役でいられるのも、マイペースで調整できるからといっていいだろう。
しかし、この谷のスタイルには批判も当然ある。スポーツ紙デスクが続けて証言する。
「谷の存在があったから柔道界に入ってきた選手は少なくないのに、彼女らを指導しようとしない。一緒に練習すれば自分が不利になるからです。引退後は指導者になっておかしくないのに、そんな声が出てこないのは当然でしょう」
ところで、谷の活動費はトヨタ自動車から出ている。一時は1億円を超えたこともあるという。
「今は8000万円前後のようだが、このまま自動車の販売不振が続くようなら世界のトヨタといえども、下げざるをえないかもしれない」(前出・デスク)
谷の夫はプロ野球、巨人の佳知(35)。推定年俸は2億円を超えるだけに、トヨタ自動車からの支援が減少しても何の不安もないが、懸念されるのは柔道家としての今後だ。柔道関係者の話。
「運動能力に優れていても、もう33歳。北京五輪で銅メダルに終わってバッシングされたとき、『やめたい…』と漏らしたこともあった。その後、撤回はしていますが、現役続行宣言するまで、それなりに時間がかかったのは迷っていたからでしょう。もし、4月の体重別選手権(福岡)も回避するようなことになれば…」
この柔道関係者も、それ以上は言葉を濁す。谷はそれほど偉大な存在なのだ。女王の進退は女王自身が決めるしかないが、その日が近づいてきているのは確かだ。
○2人までエントリー可能に
ランキング制度とともに変更になったのは、出場選手の人数。昨年まで各階級、1カ国1人から2人までエントリーが可能になった。女子48キロ級には、福見とともに山岸絵美(22)もフランス国際とドイツ国際に出場を予定している。2人は、かつて谷を破った実績があり、結果を出すようなら全柔連も軽視できなくなる。
他の階級でも52キロ級には中村美里と西田優香、63キロ級は上野順恵と穴井さやかが、複数の大会に同時出場する予定。なお、大会優勝者にはGS5000ドル(約45万円)、GP3000ドル(約27万円)の賞金が出る。