東芝が赤字続きのテレビ事業に大ナタを振るうことを決めたのは、まさに前日9月30日のこと。同事業に携わる国内外の従業員を今年度末までに半減し、海外3カ所の自社工場を1カ所に集約するという。
テレビ事業の企画、開発などに当たってきた国内スタッフは、成長分野として期待するエネルギー部門などに配転する計画で、その意味では同社の掲げる「選択と集中」に他ならない。
実際、これを強力に唱えた佐々木則夫社長(現副会長)の下、東芝はハードディスク事業、携帯電話端末事業、中小型液晶パネル事業などを売却し、エネルギー(原発)とストレージ(半導体のNAND型フラッシュメモリ)の2本柱を推し進めてきた。
「儲けの薄い事業を切り捨て、特定分野に集中することはリスクと表裏の関係にある。特にドル箱とにらむ原発事業は、国内で“脱・原発”の機運が盛り上がっていることから海外に活路を求めざるを得ない。言い換えれば、耳障りのいい『選択と集中』は大きな賭けなのです」(東芝OB)
舞台裏では、もはや同社の伝統と化している“暗闘”が、いまだに経営トップ間で演じられている。
「拡大路線派だった西田厚聰会長に対し、後任の佐々木さんは原発一筋の人で、集中路線を突き進んだ。これではガチンコして当たり前。両者に挟まれる格好の田中久雄社長が、判断を誤らなければいいが…」(同)
怪現象の原因はともかく、テレビ事業の惨状は、懲りない体質が生んだ当然の帰結かも知れない。