■「新主砲」と期待される大物、ゴームス(楽天)、ギャレット(巨人)、ビシエド(中日)の辛口評価
ゴームスは得点力不足の楽天が鳴り物入りで獲得した右の大砲。ギャレットは本塁打不足に泣いた巨人が3億円を投じて獲得した左の4番打者候補。ビシエドは低迷する中日が浮上の切り札として期待している右の大砲だ。
この3人には大きな共通点がある。それは「右投手を苦手にする右打者」ないし「左投手を苦手にする左打者」であるという点だ。
メジャーではこうした『片側通行の打者』をプラトーンプレーヤーと呼ぶ。右投手に強い左打者と左投手に強い右打者をセットにして、相手の先発投手が右か左かによって使い分けるツープラトンで使うと大きな戦力になるからだ。
しかし日本の球団は効率優先のそうした割り切った選手起用ができない。この3人も開幕から不動の4番打者、ないし5番打者に固定されて、相手投手の左・右に関係なく使われることになるだろう。
これでは結果が「大コケ」になって当然である。
それでも弱点が知れ渡るまでは、そこそこ活躍するかもしれない。しかし知れ渡ったあとは上手く対応できないゾーンに変化球を集められて打率がどんどん低下するだろう。
ゴームスやギャレットはパワーがある反面、タイミングを外されるともろい傾向があり、とくにスライダーの制球のいい投手と相性が悪い。
日本にはそのタイプの投手が大勢いるので、シーズン中盤以降はフラストレーションがたまる展開になりそうだ。
■安物買いの銭失いになりそうなルーキ(ヤクルト)、アマダー(楽天)の辛口評価
ルーキはメジャーで4年投げた実績を持つが、年俸はわずか3000万円。そのような低額で契約せざるを得なかったのは、スネに大きな傷を持つ身であるからだ。
「レンジャーズのマイナーにいた'08年、仲間とともにパーティーで一緒だった女子学生を輪姦し強姦容疑で逮捕され、短期間刑務所で服役した前科があるからです」(スポーツ専門局アナリスト)
こんな事件を起こしてもレンジャーズは将来性のあるルーキを解雇しなかったため、釈放された後はマイナーのチームに復帰しピッチングを再開。3年後にはメジャー昇格を果たした。
しかし、どこに移籍しても冷たい目で見られるため精神的に安定せず、結局メジャーには定着できなかった。
日本では、ゆるキャラに扮したりしてユーモアのある好青年のようにふるまっている。その努力は立派だが、ピッチャーがピッチング以外に余計なエネルギーを割くと好成績を出すのは難しくなる。日本で活躍できる可能性は、極めて低いように思える。
楽天の指名打者アマダーは昨年メキシカンリーグで41本塁打、107打点をマークして2冠に輝いた。それでも年俸3000万円の格安契約になったのは、2つの理由がある。
「メキシカンリーグは球団のある都市の多くが高地にあるので、平地でやるより打球が飛びます。特に昨年アマダーが在籍したメキシコシティ・レッドデビルズは標高2200メートルの高地にあるので、打球が平地より12メートルくらい余計に飛ぶのです。だからあそこで41HRをマークしても実際には20〜25本程度にしか評価されません」(同前)
しかし、格安契約になった最大の理由は「極端な体重オーバー」にあるようだ。
「アマダーは体重が135キロもあり、世界一体重の重いプロ野球選手と言われています。それが災いして、米国のチームから無視され続けたので楽天は年俸を25万ドル(約3000万円)までカットできたのです」(同前)
メジャーのチームが力士体形の選手と契約しないのは、目方が多すぎると故障リスクがどんどん高くなるからだ。その見方が正しかったことは彼が来日してすぐに証明された。
アマダーはキャンプ終盤、打撃練習で手首を負傷。全治8週間と診断され故障者リスト入り。5月上旬まで復帰できなくなったのだ。
体重オーバーの選手がシーズン序盤に故障すると、その年はほとんど戦力にならなくなる。復帰しても調整不足のため故障があちこちに出るようになるからだ。今季のアマダーはリハビリに時間を費やしているうちにシーズンが終わってしまうように思えてならないのだが…。
ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2016」(廣済堂出版)が発売中。