『相棒 劇場版II』杉下右京を引き立てる神戸尊の正義感

トレンド 2010年12月29日 16時00分

 映画『相棒-劇場版II-警視庁占拠! 特命係の一番長い夜』が12月23日に公開された。社会派エンターテイメントとしての評価に恥じず、真実を隠蔽する警察組織の不正に迫った作品である。

 『相棒』は、刑事物の人気ドラマシリーズである。放送開始は2000年の単発ドラマからで、連続ドラマがseason 9まで続いている長寿作品である。劇場版は2008年5月1日公開の『相棒−劇場版 −絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン』に続いて、2作目である。

 特命係の杉下右京(水谷豊)が亀山薫(寺脇康文)を相棒として様々な事件を解決する作品で、紅茶好きの変人・右京と熱血漢の亀山の絶妙な掛け合いが魅力であった。しかし、亀山は「亀山薫 最後の事件」(2008年12月17日放送)で警視庁を退職する。その後、右京一人だけの特命係を経て、神戸尊(及川光博)が新たな相棒になる。

 知性派の右京と肉体派の亀山という対照的な名コンビの印象が強いために、新たな相棒は難しい役どころであった。新たな相棒が第二の薫になるだけであったならば、これまでの亀山ファンからは「亀山の方が良かった」とブーイングされるであろう。そもそも「ミッチー」の愛称があり、「王子」を自称していた及川には、亀山のような猪突猛進型は似合わない。

 ドラマseason 8で神戸が相棒になった目的は、警察上層部の命で右京をスパイするためであった。そのために当初の神戸は、上層部の意に反してでも真実を追求する右京を醒めた目で見る、シニカルな役回りであった。それが右京と接することで変わっていくが、基本的には頭脳派であった。推理では右京が上手であり、シャーロック・ホームズに対するワトソン博士のような役回りが多かった。

 これに対して『劇場版II』では事実を隠蔽する警察組織に激しい怒りを示し、冷静な右京と好対照を示した。明らかに虚偽内容の上申書が通ってしまい、「悔しい」と嘆く。これに対し、右京は「悔しいじゃない。怪しいですよ」と切り返す。

 ここに重要な意味がある。日本社会には不正と欺瞞が溢れている。多くの人々は不正に直面して「悔しい」で終わってしまう。これが不正のなくならない要因である。これに対し、右京は怪しいと考え、粘り強く真実を追求する。神戸の熱い正義感が右京の秘めた正義感を引き立てたシーンであった。
(林田力)

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