■現状:和田は今季、大腿筋を痛めて出遅れたが、5月20日にメジャーに復帰。その後は先発5番手としてまずまずのピッチングを見せていた(1勝1敗、防御率3.73)。しかし7度目の先発となった6月22日のドジャーズ戦で左肩の三角筋を痛めDL入り。この故障が癒えたあと、まずマイナー(3A)で2、3度投げてからメジャーに復帰することになった。
しかし、制球が不安定で3Aの試合で度々打ち込まれたためメジャー復帰が見送られ、結局、8月末まで3Aで投げた。
復帰後の3Aでの防御率は4.67で、通常ならメジャー再昇格が望める数字ではない。それでも今回メジャーに呼ばれたのは、先発ではなく、リリーフ投手として戦力になるか試されることになったからだ。
カブスは現在、左のリリーフ投手を3人(ウッド、ラッセル、リチャード)ブルペンに入れているが、8月は全員が不調だったため、和田がリリーフで使えるか試すことになったのだ。
■プレーオフ出場の可能性:20〜30%程度。和田は狙って空振りを取れるためピンチで三振を期待できるが、その一方で、左投手なのに左打者を苦手にしているため、ピンチに左殺しのワンポイントとして使うことができない。カブスのマドン監督は状況に応じて細かい継投をするので、この使い勝手の悪さがマイナスに作用するかもしれない。
■来季の契約:カブスに残留できる可能性はほとんどない。最大のネックは故障リスクの高さだ。今季は年俸400万ドル(4億8000万円)で契約しているが、故障が続き、メジャーで稼働できたのはシーズンの2割程度。しかも来季は35歳になるので、故障リスクはさらに高くなる。戦力の底上げに注力しているカブスが和田に執着する理由はまったくない。ただ和田は、日本で輝かしい実績があり、メジャーでの通算防御率も3.40という素晴らしい数字だ(黒田博樹レベル)。そうした点を評価して、資金力に乏しい球団が半分でも稼働すればと考え、1年100万ドル程度のオファーを出してくる可能性はある。
本人にとって一番いい選択は日本への帰国だ。和田は中4日で使うと故障リスクが増し稼働率が極端に低くなるが、中6日で使えば稼働率が、グンと高くなり、まだ2、3年はエースとして機能するだろう。10億円以上投資しても、松坂大輔のようなムダ金になる恐れはほとんどない。
■現状:川崎は一昨年ブルージェイズに来てから驚くほどツキに恵まれた。一昨年はショートのレギュラー、レイエスが骨折で長期欠場。2カ月半ショートで先発出場するチャンスに恵まれた。昨年はセカンドのレギュラー格で使われた選手3人が故障やスランプで次々に姿を消したため7月以降、セカンドでスタメン出場する幸運に恵まれた。
しかし、今季はルーキーのトラビスがセカンドのレギュラーに定着し、川崎に対するニーズが激減。8月末までにメジャーに4度呼ばれたものの、いずれも3日から11日間のショートステイにとどまった。
9月1日にも昇格したが、ブルージェイズは現在ア・リーグ東地区の首位で2位ヤンキースと熾烈なつばぜり合いを演じているため、レギュラーを休ませるわけにいかず、川崎はスタメンで起用される機会がほとんどないまま、シーズン終了を迎えることになろう。
■プレーオフ出場の可能性:10%。セカンドのレギュラーになったトラビスが7月下旬に肩を痛めてDL入りし、復帰のメドが立っていないが、もう一人の成長株ゴインズが穴埋めに使われ、まずまずの働きをしている。さらにその控えとして8月末にベテランのペニントンが加入。そのため川崎は現在、セカンドの控えの2番手で、プレーオフ開幕に合わせてトラビスが復帰すれば控えの3番手に下がる。
トラビスが復帰できず、かつ、ゴインズかペニントンがケガで欠場という事態にならない限り、プレーオフ出場メンバーに入ることは難しい情勢だ。
■来季の契約:今季は3Aでもセカンドとショートの控えだったため出場した試合は半分程度で、打率も2割4分5厘と振るわなかった。通常ならこの成績ではマイナー契約をゲットすることすら難しくなるが、トロントのファンに絶大な人気を誇ることや、けが人続出のときの保険になることなどを考慮して、球団がマイナー契約で残留させる可能性は大いにある。
ただ、川崎本人は、メジャーで活躍できる余地がなくなっていることを自覚していると思うので、帰国を選択するかもしれない。古巣ホークスはセカンドのレギュラーが空席なので、古巣に戻れば毎試合スタメンで出場できる可能性が高いだろう。
スポーツジャーナリスト・友成那智
ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は各媒体に大リーグ関連の記事を寄稿。'04年から毎年執筆している「完全メジャーリーグ選手名鑑」(廣済堂出版)は日本人大リーガーにも愛読者が多い。