銀座で名の知られた専門店でもこの体たらくだから、同じ銀座の居酒屋チェーンの店長が言う「使い回しはヘッチャラ」はウソではないのだ。
店長が話す。
「ここから近い国内最高級の帝国ホテル、三越伊勢丹、それに高島屋、小田急百貨店のレストランなど、あっちでもこっちでも食材偽装がバレたけど、他はダンマリを決め込んでいるだけ。よくぞ今までバレなかったなと感心しきりですよ。偽装やってない店なんて、あるわけがない。偽装やるかどうかは店構え、格、客層に関係ない。一流人相手の帝国ホテルでもやっていたんだから」
原価圧縮が最優先され、「客がナメられているから」だという。
「だから“偽装はあって当然、ないのが不思議”というわけさ。使い回しだって同じ。それがなかったら、かえって不自然だ」
外食産業の一部では、使い回しを手前勝手に「資源活用」と拡大解釈、そして“シカツ”(資活)と呼んでいる。そのシカツが、あの店でも、この店でもこっそり行われているわけだが、それが最もエスカレートするのが忘年会、新年会の年末年始シーズン。
「この時期になると、特に刺身類はシカツが原則」
と話すのは、JR上野駅近くに古くからある大型居酒屋の副店長格。
「上からの厳命で従業員は増やせない。人件費の問題があるから。それなのに、予約がいっぱい入っている。そこにフリーの酔っぱらいも入って来る。刺身を切る時間がもったいないから、すぐそこのアメ横で切ったのを仕入れている」
それを小分けして皿に盛るだけだが、
「どのグループもかならず最低10〜20切れは残していく。丸ごと1皿残す場合もある。それを別の盛り合わせ皿にもぐり込ませて、次のグループにシカツするんです。忘年会、新年会の時期は刺身だけでなく、どれもこれも普段より安いものを使うことになっている。これも上からの指示。でも値段は同じ。安物で原価を落とせば当然収益が上がる。そこが狙い目です」
刺身に使う冷凍マグロは、夕方のバッタ売りでも売れなかった残り物だから、タダみたいなもの。
「客が食べ残した刺身が、シカツでも使い切れないほど量があるときは、日本酒をたっぷり使って醤油漬けにする。日本酒も客の飲み残しで、オチョコにあったものでも使う。醤油漬けは、マグロのヅケ丼に使うが、これは人気抜群です。ほとんど原価ゼロだけど、収益アップの優等生だね」
副店長格が言う“シカツ”は、廃棄すべき残飯の見事なまでのリサイクルだ。