そんな事情もあり、石原慎太郎氏同様に自らを「暴走老人」を呼ぶ高木監督は、今季を巨人潰しのラストチャンスととらえ、松坂獲りに活路を見出そうとしているのである。
横浜と中日の連合は実は今回が初めてではない。長嶋巨人が全盛期だった2001年にも「巨人潰し包囲網」を呼びかけ、共闘を図っているのだ。
「当時の巨人は高橋由、松井、清原のクリーンナップで下位打線が江藤、清水、阿部。斬り込み役は仁志と二岡で全員がタイトルを狙える打者でした。他球団はお手上げ状態で当時横浜の森監督が『このまま巨大戦力が突っ走ったら追いつけない』と中日・星野監督に呼びかけ、巨人にだけエースをぶつけ、他球団相手のときは駒を落として戦うという流れができた。さらに森監督が親友の阪神・野村監督に、星野監督がこれまた親友の広島・山本監督に声をかけ、巨人包囲網が敷かれたのです。案の定、巨人は2位に沈んだのですが、漁夫の利を得たのが若松監督率いる巨人シンパのヤクルトでした。今回は全5球団で巨人潰し包囲網を敢行しようとしているのではないか」(スポーツ紙デスク)
もっとさかのぼれば、1982年にも疑惑の連携があった。
このシーズン、中日と巨人が熾烈な優勝争いを展開。そこで迎えた横浜との最終3連戦。横浜は5位に低迷していたものの、長崎が中日の田尾と首位打者争いで丁々発止。結果はというと、2勝1敗で勝ち越した中日がリーグ優勝を決め、長崎が1厘差で首位打者を獲得した。その際にネット裏で囁かれていたのが「中日は優勝する代わりに首位打者は長崎に…」という密約説だった。
さて、今回の「巨人潰し包囲網」の旗頭は中畑監督が務めるが、そのバックボーンとなっているのが、母校・駒大を中心とする東都大学リーグの人脈だ。
「広島の野村監督にとって中畑は駒大の先輩にあたり、一緒にプレーこそしていないが、ともに太田誠前駒大監督の門下生。先輩から『巨人戦用先発ローテーションを、他の5球団でつくってもいいのではないか』と呼びかけられたら、エース・前田健太の巨人戦優先投入は避けられない。ヤクルトの小川監督は東都の中大OBで中畑側近の高木豊二軍監督が1学年下。先の巨人包囲網ではヤクルトが漁夫の利を得た経緯もあり、反旗を翻すのは難しい」(球界関係者)
阪神の和田監督も東都の日大出身に加え、主砲を競う新井貴浩、良太兄弟はともに駒大出身。
「華やかなイメージの東京6大学とは違い、実力の東都は地味ながらも真の実力を持つ人物が多い。ドラフト外にもかかわらず巨人の4番にかけ上った中畑をはじめ、習志野高時代にエースとして甲子園優勝経験を持つ小川、通算2020安打の野村、ロサンゼルス五輪で金メダルを獲得した和田。いずれもいぶし銀のプレーヤーで結束力が強い。長嶋茂雄(立大)、藤田元司(慶大)、広岡達朗(早大)、星野仙一(明大)、山本浩二(法大)…これまでは東京6大学出身の監督ばかりがもてはやされてきましたが、東都時代の到来を告げるためにも、結束して巨人を倒そうとしているのです。いかに巨大戦力を誇る巨人でも3本の矢どころか、5本の矢に束にかかって挑んでこられては、連覇は難しい」(全国紙運動部記者)
巨人の原監督はセ5球団の包囲網に「受けて立つ」と明言。そうはいっても巨人潰し包囲網の最終兵器が松坂大輔とまでは想定していまい。薩長土肥ならぬ横中阪広ヤ同盟の仕掛け人・中畑龍馬の凄技はいかに。