グループ内にベンチャー・キャピトル(VC)『フジ・スタートアップ・ベンチャーズ』を設立し、総額で15億円を投資するファンドを2月にも立ち上げる計画。
ポイントは、このファンド社長に亀山千広フジ常務(フジMHD取締役)が就任することである。映画『踊る大捜査線』を製作し、シリーズ4作品でフジに400億円近い売り上げをもたらしたヒットメーカーだ。
この人事は、次期フジ社長レースに関係しているともっぱら。
昨年6月に2段階出世で、大多亮氏が常務に昇進し話題をふりまいた。亀山氏を一歩ひき離した格好だったが、最近は大多氏管轄のドラマやバラエティーがことごとく失速、早くも立場が危うくなっているからだ。
今回のVCだが、どういうものなのか。
ひと言でいえば、SNS(交流サイト)やEC(電子商取引)企業への投資を加速させて、成功した企業は買収したり、傘下に据えるというもの。
ただ、この段階で2人の間に、ねじれ現象が起きる。
ネットやSNS関連事業は、これまで大多氏が“前職”のデジタルコンテンツ局長として引っ張ってきたジャンル。ユーチューブやグリーと組んで、ビジネスチャンスを模索してきた。「自社育成」と「投資」の違いはあるが、今回はその類似ジャンルを映画事業局長だった亀山常務が引き継ぎ、VCで稼ぐという構図である。
こうした2人の周辺から聞こえてくるのは、ともに次の鉱脈を模索しているが、なかなか見出せず困惑している様子である。
大多常務は視聴率レースの最大の責任者だが、3位からなかなか抜け出せない。
「鍵を握る平日午後2時からの『知りたがり!』は、視聴率が2%という日もあり、メーンの住吉美紀を更迭し、4月からは元日テレの西尾由佳理を起用する。また『笑っていいとも』のタモリや『とくダネ!』の小倉智昭の首にも鈴をつけないといけない。だが、そのタイミングを見失っている。その責任は、編成担当の大多常務にあり、このまま視聴率不振が続けば、大多常務も子会社へ出される可能性も捨てきれない」(放送専門紙記者)
亀山常務も、映画製作事業では壁にぶつかっている。
『踊る…』はパート4で終わり、『BRAVE HEARTS 海猿』は、原作の漫画家との確執が表面化、シリーズ化は無理な状態。
今後は、こうした“堅く稼げる作品”がない。フジ製作で興収50億円を突破した『テルマエ・ロマエ』のような企画もなかなか見当たらない。
次期社長候補にはダークホースがいる、との声も出る中、トップ人事レースは混沌としてきた。