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巨人、阪神は本当に「ドラフト敗者」か?

 今年のドラフト会議(10月25日)は、大阪桐蔭・根尾昂内野手の指名に成功した中日、同じく、報徳学園・小園海斗内野手の交渉権を獲得した広島が「勝者」と称されている。また、大学生、高校生投手を大量指名した千葉ロッテ、前評判の高かった大学生投手と高校生投手を1、2位で指名した埼玉西武に高得点をつけるメディアも多かった。
 一方で、「ドラフト敗者」とされたのが、阪神と巨人だ。ともに抽選を2度外し、3度目の入札でやっと1位選手が決まった。“本命選手”を指名できなかったのは事実だが、ドラフト会議とは戦力の均衡化が目的である。一人の逸材に指名が集中すれば、獲得できる確率は「12分の1」。ギャンブルのような確率性に球団の将来を賭けるのではなく、現有戦力も考え、現場のニーズに合った選手を絞り込み、指名に臨むのがドラフト会議である。

 ドラフト会議の最中、球団関係者の控室でこんな声も漏れていた。
「よく、この順位で残っていたな…」
 阪神が4位で社会人・Hondaの齋藤友貴哉投手(23)が指名されたときに出た言葉だ。齋藤は即戦力投手と評され、「1位指名の12人の中に入る」の声も出ていた。
 その高評価の右腕が下位指名となった理由は定かではない。「23歳という年齢がネックになった」と予想されるが、先発投手のコマ不足に悩む阪神にとっては、ピンポイントで弱点を埋めることができた。
 巨人も現有戦力とのバランスを考えた場合、プラス材料は少なくない。2度目の抽選も外した後、巨人は大学生左腕・高橋優貴(21=八戸学院大)に切り換えた。1位指名に関して言うと、阪神が一貫して外野手を入札したのに対し、巨人は「高校生内野手=根尾、大学生外野手=辰巳涼介(21=立命館大)、左投手」と“浮気”が続いた。遊撃手・坂本の後継者、外野手、先発投手と、補強しなければならない部分が多かったからだろう。

「高橋は東海大菅生高から八戸学院大に進みました。八戸学院大の正村公弘監督は東海大OBで原(辰徳=60)監督の後輩です。東海大カラーが原監督の復帰でさらに強まりました」(球界関係者)
 高橋は球速150キロ強を投げる。巨人の主な左腕投手といえば、内海、田口、今村、メルセデスらがいる。しかし、メルセデス以外は技巧派だ。ここに、スピード勝負のできる高橋が加わったことで、投手起用の選択肢も増えた。まして、4位で同じく150キロ強のストレートを放る高校生左腕の横川凱(18=大阪桐蔭)も指名している。現有戦力との兼ね合いを考えれば、高橋の指名は間違いとは言えないはずだ。
「2位で増田陸(18=明秀学園日立高)を獲りました。根尾、小園ほど有名ではないが、高校生ではAランクの遊撃手です。打撃センスもあり、ソフトバンクの松田に似ています」(在阪球団スカウト)
 今年のセンバツ大会に出場している。スローイングに「やや難アリ」の印象をもったスカウトもいたが、明秀学園日立高の監督は金沢成奉氏だ。かつては青森・光星学院(現・八戸学院光星)を指導していた名将で、教え子の中には、巨人・坂本、阪神・北條もいる。その金沢監督が太鼓判を押すスラッガーである。即戦力ではないかもしれないが、将来のクリーンアップ候補と見ていい。

 元スカウトマンがこう言う。
「ドラフト直前、新人選手と二軍指導者の関係も考えます。お目当ての選手がチームの気質に合わないと分かれば指名を見送ることもあります。人間同士だから、合う、合わないがあって当然。自分に合わない指導者の下では素質を開花できないので」
 二軍指揮官として「シーズン163個」の盗塁新記録を達成させた矢野監督が、俊足の近本光司外野手(23)にホレ込み、原監督が東海大カラーを知る投手を獲った。元スカウトの「合う、合わない」の定義に基づけば、巨人、阪神の今年のドラフトはメディアの評価を覆す可能性もある。(スポーツライター・飯山満)

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