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ビール出荷は過去最低… 業界覇権への思惑が交錯する中 清涼飲料水ウォーズ勃発の号砲が鳴った!(1)

 アサヒグループホールディングスによるカルピス買収が完了したことで、傘下の清涼飲料部門・アサヒ飲料のシェアは、単純合計で一気に12.5%まで高まった。昨年実績で10%超だった伊藤園を突き放し、3位に躍り出ることになる。
 アサヒ飲料は昨年6月、親会社の宿敵でもあるキリンのキリンビバレッジを抜いて4位に浮上したばかり。「一時は赤字続きで存亡の危機に瀕していた」(関係者)会社が業績の急回復を遂げたばかりか、わずか1年半の間にコカ・コーラグループ、サントリー食品インターナショナルに続く“国内ビッグ3”の一角を占めるまでに至ったのである。

 ところが、泉谷直木社長は「国内市場の基盤強化への貢献に期待しており、(これを機に)成長を一気に加速させたい」とのコメントを発表、対外的には努めて平静を装った。その理由はおそらく、ビール5社が直後に発表したビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)の1〜9月間の課税出荷量に起因していると思われる。出荷量は前年同期比1.4%減で、1〜9月としては1992年に現在の統計を取り始めて以来、過去最低だったのだ。
 それだけではない。昨年の課税出荷額も前年比3.7%減と振るわず、実に7年連続で前年割れが続いている。少子高齢化、節約志向、さらには東日本大震災の追い打ちなど理由はさまざまだが、消費者のビール類離れが加速しているのは疑うべくもない。だからこそビール各社は清涼飲料シフトを強化。とりわけアサヒは2010年にハウス食品から『六甲のおいしい水』を買収し、それまで3%だったミネラルウオーター市場のシェアを10%まで急拡大させたばかりでなく、同じ年に麦茶市場で80%超のシェアを誇った『六条麦茶』をカゴメから買収するなど、特に積極的だった。
 「これらのケースに比べ、カルピスは会社ごとの買収だから極めて野心的。しかも唐突な買収ではなく、'01年に自販機への商品の相互乗り入れでアタックし、'07年には共同で自販機事業会社を設立して乳酸菌飲料の妙味を知り尽くしてからの丸呑みです。最初から巧妙なシナリオが練られていたのは間違いないでしょう」(経済記者)

 独自経営を続けてきたカルピスは1990年8月、味の素に第三者割当増資を実施、味の素が同社の筆頭株主になった。その味の素は'07年10月、優良会社のカルピスを完全子会社に組み込んだ。
 奇しくもアサヒが共同の自販機事業会社を設立したのは、そのときである。前出の経済記者が苦笑する。
 「味の素は'06年秋、グループ会社のメルシャンをキリンに売却した。その直後にアサヒ首脳は『今度は当社の順番だと迫った』という、笑うに笑えない話がくすぶっています」
 事実関係はどうあれ、10年以上も前のツバ付け作戦が遂に奏功し、「乳酸菌飲料で断トツのブランドが手に入った」(泉谷社長)という結果になったわけだ。

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