「思ったよりも多くの声援をいただいて嬉しかった。待っていてくれたんだな、と思いました」
怪我明けの横綱は、そう言ってニッコリ。休場した後、春場所が終わるまでは東京で治療に努めていたが、その後はモンゴルに帰国し、12日に再来日したばかり。モンゴルでは、五輪選手のリハビリも指導したという人物による指導を受け、軍隊も取り入れているメニューで鍛え直したという。ヨガにも挑戦したほか、秘伝のスープを飲むなど、食事療法にも取り組んだそうだ。
その甲斐あってか、痛めた患部は急ピッチで回復。巡業合流から4日目の20日、千葉県柏市巡業では、春場所初日に突き落とされて負けた正代を相手に14番もの稽古をこなし、ただの1番も負けなかった。
「どうしていきなり正代を相手にしたかって? やはり春場所の件がありますから。よかったね、息もあがらなかったし。柏市の人も喜んだんじゃない」
そう6場所ぶりの優勝に向けて手ごたえを感じていた白鵬。しかし、38回目の優勝は決して容易ではない。
この半年で、白鵬を取り巻く状況は大きく様変わりした。左肩などを痛め、春巡業には参加していないが、稀勢の里が大きく台頭。先場所も、奇跡の逆転優勝を成し遂げたばかりだ。
勢いと自信は膨らむ一方で、白鵬はテレビでその模様をつぶさに見ては、
「よく横綱の責任を果たしてくれた。次は自分の番だ」
と闘志をかきたてていたが、果たして勢いを止めることができるのか。
「スポーツの世界では、1日休めば、元の状態に戻るのに3日かかると言われています。白鵬は1カ月も休んでいますから、そう急には元に戻らないでしょう。年齢も32歳。尊敬する昭和の大横綱、大鵬は1年以上も前に引退している年齢ですから。よほど性根を据えてやらないと復活優勝は難しいのでは」(協会関係者)
ちなみに4月25日、白鵬は都内で元横綱・朝青龍(36)の甥で日体大柏高3年のモンゴル人留学生、スカラグチャー・ビャンバスレン君(17)に初めて稽古をつけた。かつてしのぎを削ったライバルへの恩返しの意味合いも強い。間違いなく注目を集めることだろう。
注目の夏場所は5月14日から始まる。