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40代以上必読 「葬式」の値段 簡素化する「終活」の実態(2)

 今から10年前に東京都生活文化局が行った『葬儀に関わる費用等調査報告書』によると、葬儀社への支払い額は最高で850万円、最低で3万8000円、平均で176万9000円だった。その後、年を追う毎にその金額は減少し続けているという。現在はインターネット上に、安さを売りにする仲介業者が溢れている。たとえば『直葬15.8万円、家族葬29.8万円』『追加料金無し総額15万円』などなど、格安のプランが目白押しだ。
 「業界では大手流通のイオンが葬儀事業を始め、全国一律19万8000円の料金プランを打ち出したことが大きいですね。葬式というと、高額な費用がかかるのではないか、葬儀屋の言い値にだまされていないか、など不安を持つ人が多かったのです。それをイオンは、わかりやすい料金体系で示したことにより成功した。今ではネットで料金を比べ、より安い業者へ事前に相談に行くパターンが普通になっています。今後はそういった人がさらに増えていくでしょうね」(前出・寺尾氏)

 確かにイオンの葬儀はわかりやすいのが特徴。遺体搬送から花の手配に加えて、全国全宗派の寺院まで紹介してくれる。しかも支払いはイオンカードでOK。フリーダイアルでコールセンターに電話1本することで、すべて手配が完了し、しかも明瞭会計とくれば利用者が増えるのも納得だ。もっともその明瞭さが逆に災いして、仏教界からの反発を招いたという過去がある。
 「以前のイオンのホームページには、戒名料の目安が記載されていました。全ての価格を明確にするというお客のニーズに応えたものだったのですが、これに仏教教団で作る全日本仏教界が反発した。『布施は宗教行為。営利企業が一律の価格体系を示すのはいかがなものか』というのがその理由です。確かに戒名料は地域や寺によってさまざまなのは確か。しかし、全国的な目安が明らかになってしまうと、儲けに響くというのが仏教界の本音でしょうね。現在は両者間の話し合いの結果、該当項目は削除されています。しかし、これは『必ずしも意見書を受け入れたというものではない』(イオン関係者)ということで、今でもサポートセンターに問い合わせれば、いつでも教えてくれますよ」(流通業界紙記者)

 一方、イオンに続けとばかり、中小の葬儀屋も活発な宣伝活動を展開している。都内のある会社では9万8000円の直葬プラン(火葬料別)を出したところ、客のほとんどがそのコースを選んでいるという。通夜、告別式は当然行われず、大げさな花の飾りもなし。病院から安置所へはワゴン車で運ぶ。
 「父親が亡くなった時に、せめて葬式くらいは立派に出してやろうと決めていました。しかし、周りに白木の立派な祭壇で葬式をあげている人なんていないんですよ。高齢の父には弔問客もあまりいませんし、結局、ひっそりと家族だけで火葬して終わりにしました。簡単でお金もかからないし、これなら、自分や妻の時も同じでいいと思いますね」(57歳・会社員)

 このような、葬儀に対する消費者意識の変化は、当然、葬儀屋の業務形態をも変えさせた。かつての葬儀は、松竹梅のコースで料金を区分けし、数十万円もする白木の祭壇で豪華に飾るものも多かった。葬儀屋にとって使い回しの利く祭壇は、まさにカネを生み出す打ち出の小槌だったのだ。しかし、もはや葬式バブルも崩壊。生前の地位を誇示するような派手な葬儀など、一般人のみならず、芸能人でもごく一部らしい。
 「以前の葬儀屋は病院などと提携し、死者が出たら仕事を受けるというような形態が多かった。大規模な病院で独占的に契約を結ぶとなると、年に2000〜3000万円もの契約料がかかったんです。当然、それらは皆さんの葬儀代から支払われることになる。いかに高い料金を払わせられていたかわかるでしょう? しかし、そんな時代はもはやとっくに過ぎ去りました。バブル時に立派なセレモニーホールを建築した葬儀会社などは、開店休業状態で借入金を返済することすらままならない所も出てきています。昔はサラリーマンが亡くなると、会社関連の弔問客が多数訪れた。しかし、不景気な今のご時世、会社からはお金も人も出ません。弔問客が親戚だけなら、いっそのこと家族葬でいいやと考える人が増えてきたのもうなずけますね」(前出・寺尾氏)

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