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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 羽田が足りない

 国土交通省は、来年3月に拡大する羽田空港の発着枠の航空会社への配分を発表した。増加する25便のうち、全日空に配分されるのは8便、ライバルの日本航空に配分されるのが3便となった。その他の航空会社への配分は、スカイマークが4便、ソラシドが3便、エア・ドゥが2便、スターフライヤーが5便となっており、大手航空会社としては日本航空への配分が極端に少ないことがわかる。
 公的支援で救済したのだから、自助努力で経営している他社と同列には扱えないということなのだろう。日本航空は、'12年3月期の連結決算で1866億円もの純利益を計上しており、しかも会社更生法の適用会社として、破綻後7年間、欠損金が所得から全額控除される。つまり今後6年間は法人税の支払いが実質的に免除されることになる。免除額は4000億円にものぼるとみられており、大幅なリストラの効果も加わり、しばらくは大儲けの状態が続くとみられる。その日本航空に、さらに競争を有利にする大きな発着枠を与えるわけにはいかないというのが、今回の国土交通省の判断なのだ。

 もちろん、それは一つの見識ではあるが、発着枠の配分をめぐって、水面下では相当熾烈な航空会社間の奪い合いがあったようだ。地方空港間の路線を新設しても採算はとれない。
 だったら、奪い合いなどせず、もっと発着枠自体を増やせばよいのだが、それは容易ではない。羽田空港にはすでに4本の滑走路があり、5本目を新設しても航路が錯綜してしまって、発着便を大きく増やせないのだ。しかし、方法はある。東京都福生市にある米軍横田基地を返還してもらって、羽田、成田に次ぐ第3空港として整備すればよいのだ。

 地図を見ると、横田基地は絶好のロケーションにある。横田・成田・羽田がきれいな逆三角形に並ぶのだ。
 横田基地は、東京都の多摩地域、埼玉県西部、山梨県東部に囲まれていて、多くの潜在利用客を周囲に抱える。また、3350メートルの滑走路を持つため、大型の飛行機も発着できる。
 空港へのアクセスも、JR五日市線と西武拝島線が、すぐ隣の拝島まで来ており、さらに拝島からは、ジェット燃料輸送用の専用線が敷かれている。だから、既存施設を活用するだけでも、JR中央線などを経由し空港まで直通の特急を走らせることが可能だ。道路のアクセスも西側を国道16号線が通っており、圏央道からも短い接続道路をつけるだけでアクセスが可能になる。

 石原慎太郎氏が、東京都知事時代には、横田基地の民間利用を公約していた。しかし、米国空軍と航空自衛隊による横田基地の軍事共用化が進められようとする中で、横田基地の民間利用は、フェードアウトしてしまったのが現実だ。
 また、横田基地は「横田空域」と呼ばれる1都8県におよぶ広大な空域の航空管制を行っている。この横田空域を民間機が飛行するためには、事前に米軍と協議して許可を得なければならない。つまり、首都圏の空は、いまだに事実上米国に占領されたままなのだ。

 多くの政党がTPPで堂々と米国と協議して譲歩を獲得すればよいと主張しているが、現実には戦後67年も経って、いまだに首都圏の空を取り戻せていない。横田を返せと主張する政党さえないのだ。

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